真野ちゃん法度。
占いは良いことだけを信じるべし。(1/17)
「逢坂さん。言い過ぎよ」
「あ?…普通だろ。うちは今までもこうやって面接してきた。ここで耐えられねぇ奴は入ったとしてもいずれ辞める。言い過ぎくらいで丁度いい」
これが噂の、何人も泣かせて辞めさせてきたという鬼の面接?
「今までもこんな感じだったわけ?」
目の前の航大くんに尋ねると、「残念ながらこんな感じです…」と肩を落としている。
原口さんも半ば諦めているような表情をしていて。
天くんも同様、「いつものことー」と何度目かわからないあくびをしている。
…私なら蹴り飛ばしてるわね。こんな面接官。
「優ちゃん。今のを聞いてわかったと思うけど…。優ちゃんの超ーーータイプのイケメンはかなり口が悪いんだ。こうやって面接中にも平気で文句を言って何人も辞めさせるし…女の子の涙も通用しないような手強い奴なんだけどさ。それでも大丈夫?」
…原口さん…今なんて…?
「僕たちの仕事って、優さんの大っ嫌いな掃除の依頼とかしょっちゅうくるんですよ。それでも大丈夫ですか?出来ますか?」
航大くんまで。
『優、掃除とか大っ嫌いだから』
『超ーーー優のタイプな黒髪のイケメンが載ってて』
何故、優ちゃんが昨日話していたことを知ってるの。
「何のことだか…よく…っ…」
「おまえ。いつまでそうしてるつもりだ?上手いこと騙せてると思ってんのはおまえだけだぞ。原口さんも天も航大も…もちろん俺も。全部気付いてる」
「………っ、」
「…働く気もねぇのに頭まで下げて…何企んでる?」
「…真野さんですね…。真野さん…皆に言ったんですね。何も言わないとか言ってたくせに」
逢坂さんに冷たい言葉を投げかけられて、それまで俯いて黙っていた優ちゃんが、私の方をキッと睨みつける。
「あー。それ、言ったの俺ー。真野ちゃんは何も言ってないよ」
「…作田さんが…?」
「そー」
天くんが?
どういうこと?
昨日あの場所に、天くんはいなかったはずなのに。
「…昨日さー、優ちゃんの目つきが一瞬変わった時があって、なんか怪しくね?って思ったんだよね、俺。んで、優ちゃんが真野ちゃんに相談あるっつって外行った時、ついてってみた。…んで、色々おもしれー話してんの聞いちった」
「…」
「蒼くん落とすとか、男は皆大好きとか、あのお菓子は買ったやつーとか…あとなんだっけ。あ、蒼くんと付き合ってんなら早めに潰す、とか」
全然気が付かなかった…。天くんがいたなんて。
いつ?いつ優ちゃんのことを怪しいと思ったの?
昨日の記憶を辿る。
『…そうなんですね。真野さんって…皆に愛されてるんですね』
『あれ?あれれー?』
『どうしたのよ、天くん』
『…いや…真野ちゃんが、…眼鏡かけてんなーと思って』
…まさか、あの時?
あの時に、天くんは何かに気付いてた…?…嘘でしょ?
「…ま、こいつらもただのバカじゃねぇってことだ」
そう言って、逢坂さんが意地悪く笑う。
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まえ[*] つぎ[#]
➣しおり挿入
*Tenn's story*
ねーねーなっちゃん。
続編ではありませんが「真野ちゃん法度。」のその後のお話になります。
真野ちゃんを読んでいなくてもわかるようにはしていますが、読んだ後の方が楽しんで頂けるかと思います。
*既婚者♀(年上)×独身♂(年下)*
Lily.
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