[黒金 白夜](1/8)
「…まだ眠らねぇよ。真っ昼間じゃねぇか」
永琳さんは驚く。なぜなら俺は喋れるはずがないからだ。
ウドンゲは驚く。なぜなら俺の気配が変わったからだ。
俺は驚く。なぜならこれは決して俺が言ったわけではないからだ。
そいつは笑う。なぜなら表に出れたからだ。
「『白銀白夜改め黒金白夜でございます。以後よろしく』なーんてな」
永琳さんは距離を取りウドンゲと一緒にこちらを威嚇する。
「そんなに威嚇しなくてもいいじゃん、そっちのが人数的に有利だし」
「黙りなさい。撃つわよ!」
「よらば斬ります、みたい――なぁい!?本当に撃つなよ、心臓に悪い」
「なっ!」
永琳さんが焦るのも無理はない。黒金は矢を避けようとはぜず、ただ、片腕で虫でも払うかのように弾き飛ばしたのだから。
「…楽しくいこうぜ?な?」
コイツ…。なんなんだ?
『…なぁ、白夜。危ないところを助けたんだぜ?そんなに敵意剥き出しにすんなよ。怖いじゃん』
いきなり俺の目の前に黒金が現れる。なんて言えばいいのかわからないが…俺は今まで暗い場所で俺自身を見ている状態だった。だが、俺が見ていた俺が黒金になったような…。説明し辛いな。
『だからこそだよ。あのままならお前の目的達成できてただろ?助ける理由がわからん』
黒金の呆れたと言わんばかりのため息にイラッとしだが、頑張って堪える。
『いいか?俺はお前を殺したい。だが、俺はお前が死んだら消えるんだぜ?つまりどういうことだと思う?』
『お前自身が俺を殺せないってことか…?』
黒金は俺の返答を聞き、ニヤリと笑って『ハイ正解ー』などと言っている。
『あくまで俺の手でお前を殺したいんでね』
『でも…俺を殺したらお前も消えるんだろ?ならなんで俺を殺そうとするんだ…?』
『言うと思うか?』
『……思わないが』
『なら訊くんじゃ――っと、女は我慢が効かないねぇ』
彼がそう言うのと同時に、俺の視界はいつも通りの視界、つまり一人称視点に戻る。
そして視界には既に無数の弾、弾、弾。数えることすらバカバカしい程の弾が津波のように襲い掛かってきていた。
俺は身を屈めて当たる範囲を小さくして弾の隙間を避けようとしたが――
マジかよっ!
――俺の身体はまるで固定されたかの様にぴくりとも動かない。指を動かすことすら、瞬きをすることすらできない。
しかし、いきなり俺の意志と反して身体が小刻みに右に左にと動きはじめる。
奇妙なことに、俺はその動きだけで弾幕を簡単に避けてきってしまった。
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