DiD(解離同一性障害)
#[ケサランパサラン(DID続編)](1/66)
はるかなる思い
それが大きく見開いた眼球を伝い口元まで伸びていた。
もう生きてはいない…
すぐにそれはわかった。
"ズルズル、ズルリ、ズルズル…"
前方の隙間ががあくのを見計らって彼は顔色ひとつ変えることなく無表情にゆっくりと歩を進めてゆく…
その都度、
負ぶさる女の長い髪がゆらゆら揺れる…
(大変だ!)
驚きふためいた僕は携帯を取り出し警察に通報しょうとした。
「何してるんですか?」
その時、
すぐ後ろにいたあの男が訝しげに尋ねてきた。
「ここでは携帯なんか通じませんよ」
「はぁ…?」
首をひねる僕に男は続けた。
「わかっているでしょうがそんなこと。
あんたもひとが悪い…」
どおいうことだ。
人が死んでるんだぞ、
経緯は定かではないが犯罪の確率が極めて高い状況ではないのか?
なのになぜ…
「不倫の末の若い女性との無理心中ってとこですかねぇ。
いやいや、うらやましいですなぁ。
わたしなんか仕事だけに生きてきたものですから女房一筋で…
まぁ、結局その女房にも愛想をつかされてこのざまなんですがね」
呑気に語る男に相槌を打つふりをしながら
僕は隣の列のふたりの後に続く中学生ぐらいに見受ける娘に目を止めた。

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