DiD(解離同一性障害)
*[DIDD](1/7)
はぐれ雲
「ママをいじめないで!」
ベットから飛び降りるとあやは梨華に寄り添い仇を見るような目で僕を睨みつけた。
「わたし、いい子にするからママ、そばにいて!
わたし、ママが好きなんだから…」

彼女が泣いた。
大粒の涙をポロポロ流し梨華にしがみつき声を出して泣いた。
泣けばぶたれるという
雁字搦めな心の奥に潜むジレンマから人前で泣いたことがなかったはずの彼女が
初めて見せた悲しみの表情に僕は愕然としたじろいだ。
これが誰も割り込めない親と子の絆なのだろうか?
今、そこにいるのはあのしっかり者の基本人格のあやたんだとわかった。
「もう迷惑かけないから、ごめんなさい、
ママ、ごめんなさい…」
そう繰り返す彼女を見つめそっと頭を撫でる梨華…
僕はドアのノブを回し外に出た。
いつの間にか夜は明け眩しい日差しが窓を照らし始めていた。

[どんなに長い夜でも朝は必ずやって来る…]

しかし、その朝はいつもすがすがしい朝だとは限らない…
もう戻れなかった。
病室の中から小声で聞こえてくる定かでない内容の会話。
他者の入り込む余地のない閉塞感…
居場所をなくした僕は店に体調不良を理由に
「今日は休む…」
と連絡を入れ帰路に着いた

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