中学生×高校生

 お話 1/10 

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紗姫は家の近所の公園で1人涼が来るのを待っていた。


まだ6時だが辺りは真っ暗だ。


さむっ…。


1枚しか羽織って来なかったことを後悔しながら、紗姫は身を縮こませた。


はぁ、と息をつくと真っ白な息が出る。


ジャリッと足音がして、振り返ると紺色のジャケットに身を包んだ涼がいた。


ほっとして、思わず笑みが零れた。


こんな時間にこんな所にいるという事実が怖かったのだ。


心細くて、待っていた人が現れたことに安堵の表情を見せた紗姫。


それに気づいたのか、涼はくしゃっと紗姫の頭を撫でた。




「待たせたな、行くぞ。」


『うん!』




2人で肩を並べて駅へと向かう。


定期を改札に通して、電車に乗り込んだ。




「お前が中で話してる間、外で待ってるから。
あいつと帰るってことになったらLINEしろ。」


『うん、分かった。涼はどうするの?』


「1人で帰るに決まってんだろ。」




紗姫の問いかけに苦笑いで答える涼。


紗姫は慌てて首を振った。




『駄目だよ!1人で帰るなんて危ないよ。
一緒に帰ろう。』


「いや、カップルと帰るとかどんだけ気まずいんだよ。
俺、めっちゃ空気読めねぇ奴じじゃん。」


『カップル!?いやいや、私付き合うつもりないから!』




慌てて否定する紗姫を見て、涼はあぁ、と頷いた。


紗姫が鈍感ということを忘れていた。


全く、このカップルはお互い鈍感過ぎて世話が焼ける。


涼は1人、苦笑いをした。




「ま、いいや。とにかくあいつと帰るってことになったらLINEすること。
俺のことは気にせず、あいつと2人でいること。
これは守れよ。」




優しく微笑む涼。


紗姫は不本意ながらも渋々頷いた。


その間に電車は春弥の中学のある駅へと近づいていた。





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