陽炎の君
[陽炎](1/1)
道路沿いに規則正しく植えられた木が
まるでスピーカーのように五月蝿く響く季節。
自分の余命を知ってか知らずか、
一生懸命に鳴く蝉達の事を
考える余裕も無いぐらいの暑さに
思わず皺が寄る眉間。
不愉快なぐらい灼熱の太陽に照らされて
額に浮かぶ汗を拭い、重い足を運んだビル。
慣れないドアを押し開いたそこに見えた彼は、
太陽と同じぐらい眩しい金色の髪を靡かせていた。
普段口にする言葉とは裏腹な
熱い想いをメロディーにのせて。
彼は今日もカラフルなスポットライトと歓声を
全身に浴びるのだ。
細められる目、下がる眉尻。
綺麗に弧を描く口元から溢れる甘い言の葉。
…そんな彼は端から居ない。
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