勿忘草
[episode1](1/5)
渚星side



誰も居ない屋上。


粉のような雪が手のひらに舞い落ちる。


冷たい空気が頬に刺さる。


スカートのポケットの中に入っているスマホから振動が伝わる。


『もう疲れた。』


心の中に隠していた声が漏れる。


いつ止まるか分からない心臓がやけに心拍を速める。


長くは生きられないと知って1ヶ月が経った。


彼氏への感謝と別れ話が綴られた手紙が入っているというだけで鞄が異常に重く感じる。


再び鳴りだしたスマホ。


画面には水篠 集人と表示された。


世界で一番愛しい人。


『さて、行きますか。』


そう呟き電話に出る。


「渚星?もう着いたよ。早くしないと俺も遅れるから。」


彼とはバイト先が同じで今日は同じ時間からシフトだったため迎えを頼んでいたのだ。


『ん、ごめん。今から行くね。』


そう言って通話を切ると急いで階段をかけおりた。





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