ケダモノの妻
[第十七章](1/9)



見慣れない大地を見渡しながら、花衣は不穏な気配を感じ取っていた。


海へ向かっているせいか、辺りは緩やかな大地が大半を占めていたが、所々にある野の焼け焦げた臭いや跡は戦況の生々しさを語っている。


花衣は馬の腹を軽く蹴り、進軍している導入部隊と花衣自ら指導した精鋭部隊の列に戻った。


雨月の初参戦により炉斑は兵力にも物資にも致命的な損害を受けていた。
これ以上大掛かりな戦略で攻め込まなくても、このままこちらの継続的な攻撃で敵国は自ら崩れ落ちるものだと、花衣たち国の軍人は確信していた。   


所々不確かな出来事が起こっていたものの、戦は順調に自国が有利のまま進んでいたのだ。
そのため、花衣たち軍人は役割を分担し何度か城に戻って事細かく戦況を報告する余裕があった。


しかしその少しばかり平和だった時間もある伝達兵の報告によって終わる。


いつまでも悪足掻きをしていた敵国が、徐々に南へと逃げていたことは花衣たち上層部の軍人も知っていた。


そのため、戦場は南西の海岸まで移動している。


国境だということもあって、その周りに農村はほとんどなかった。
しかし、人間の手が施されたような跡のある海岸に踏み入れる前に、違和感を感じた部隊の兵により、部隊の導入が決定されたのだ。


___雨月が戦に初参戦してから、二月が経った頃のことだった。



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