ゆめをみたいの。
[16* 君を守るために僕は](1/15)
べつに、少女漫画の王子様キャラになんてなるつもりはなかった。
「高松 花ってさ、たいして実力もないのに先輩達に良くしてもらいすぎじゃない?どうせ枕のくせに」
「顔もスタイルも演技だって下の下なのにね〜。自分のスタイル貫きますみたいな根性ほんと痛くて逆に可哀想になる」
有り難いことに声優というお仕事をして、それなりにバイトもせずに食べていけるようになって王子様キャラという役も何役かやってきた。王子様キャラじゃなくたってヒロインを助けるヒーローみたいなキャラもやってきて俺もそんな中身だけでもかっこよくなりたかった。
だけどそれは理想で実際は、茨城の田舎から声優になる為に上京してがむしゃらに仕事をしたらいつのまにかアラフォーになっていた職業、声優。そしてただの、前野智昭だ。
はぁ、ほんと勘弁してくれこの空間。
少女漫画原作のドラマCDの休憩中。コーヒーでも飲もうと自販機があるロビーに来たらフレッシュな、大好きな野球に例えると育成選手みたいな若い女の子達が口を揃えて花ちゃんの悪口を言っていた。
さっきまで「今日はよろしくお願いします〜」なんてニコニコしていたのにつくづく女の子ってこわい。そして何よりこわいのは悪口の対象、花ちゃんに「わたし今日、すごく緊張してて……」ってか弱そうに相談していたことだ。
普段なら何も見てないし何も聞こえてないフリをしてそのまま自販機のコーヒーを買ってスタジオに戻るけど今日はそういう訳にもいかなかった。
それは何故かというと、
「……………………………………」
花ちゃんが、自分が彼女達の話題に上がってることを、しかも悪い話題に上がってることを偶然聞いていたからだ。
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