ゆめをみたいの。
[13* こいごころよ、この先も](1/28)






細谷「ほんと綺麗な看護師さんでね、俺のことを患者じゃなくて一人の人間として接してくれて、」

「…………ほう」

細谷「眼鏡の奥がセクシーなんだよ!!プライベートではどんな感じなんだろうって考えてた!!」

わたしの彼氏は、恋人は、女心がきっとわかっていない。

細谷「花もたぶん見たことあると思う!この前お見舞いに来てくれた時に、」

いや、女心というよりわたし心?まぁ、どっちでもいいんだけど。

久しぶりに細谷くんに会った。休業すると聞かされたのは世間に発表する前で「少しお休みしようと思うんだ」って言われてそれは、相談ではなくて決定事項だった。彼の覚悟だった。詳しく話を聞いて少しだけ泣いた。全く気づかなかったから。自分の不甲斐なさに腹が立って、この人がこんなにも悩んでたのにわたしは何も気づかずに呑気に笑ってた。

「ありがとう、花。俺のことで泣いてくれて」って細谷くんはわたしを優しく抱き締めて。その温もりにまた涙が出た。

後から安元くんから「花に打ち明けるのが一番嫌だって言ってた。絶対泣くからって」そう細谷くんが言っていたと聞いた。わたしに事前に言ってくれなかった理由は、なんなとなく想像ついていたけれど、わたしが好きになった人はこんなにも温かい人なんだと改めて実感した。「おまえ愛されてんなー」って安元くんはいつものいい声で笑ってた。「わたしも負けないくらい好きだよ」って言ったら、「今の録音して聞かせてやりてぇ」って笑ってわたしの髪をくしゃっと撫でた。

それから細谷くんは、声優活動をストップした。世間に発表していろんなとこで騒がれてニュースになってたけど、なんだか実感が湧かなかった。だって当の本人はいつも通り隣で笑ってるし、今期は共演作品がないだけな感じだった。だからこれからも入院はするだろうけど特には変わらないだろうなって思ってた。

…………うん、思ってたんだ。






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