恋に落ちるその日まで -1st-
[裏切りと憎しみ](1/12)
「月雲さん、さっきの書類だけど
「キャビネットに戻してます。必要なら出します」

「月雲。ここのデータ確認してもらっていい?」
「急ぎますか?これから会議なので」



「わぁ〜月雲さんキレてるよね?かっこい〜」
「うんうん。最近いつもに増して働いてるわぁ」


あの夜の翼はまるで別人のようだった。
あんなに余裕のない翼を見たのは初めてで

次の日の朝はまたいつも通りの笑顔でおはようを言ってくれたけど、心なしか、ふいに見せる表情が曇っているように感じるのだ。

それでも栞に誤魔化すように笑って見せるため、それ以上は踏み込むなと言われているようで聞けない。

気が付けば、翼のことを考えてしまう。
あの夜の今にも泣き出しそうな翼の顔が頭をチラついて何とも切ない気持ちになってしまうのだ。


一度思考を止めてしまえば翼のことばかり考えてしまい、仕事が手につかなくなってしまいそうで
ひたすら、没頭した


会議から戻ったところで、同僚に呼び止められる。

「月雲さん、本郷さんって方とアポ取ってる?」
「え?」

「今、直接ロビーにお見えになったみたいで、月雲さんと話ができないかって
「本郷さん?」


本郷と聞いて思い当たる人と言えば本郷忠臣くらいだが、そんなはずはないし

ひとまず会ってみようと、ロビーへと向かった。



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