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蜂の巣の様に
六角形の扉が壁一面に並ぶ景色。
周りの光沢のある黒い壁は
まさに人の隠された闇のよう。
床に悲しく倒れた尊い命と
流れるのを止めた赤い血。
生きとどまる3つの命が
元々ある人の判断力を超越し
未来の選択をする為に醜く交差する。
宏明「うわあああぁぁぁああああ!!!」
松島「君が入れと俺は言ってる!!!」
誰が悪い……?
挙動がオカシイ……
誰が悪い……?
怒りじゃない力……
教えてくれ……
誰の為に……?
誰が正しい……
何の為に……
オカシイ……
ま
まさか
俺の……
自分の……
……為?
違うっっっ!!!!!!!!!!
宏明「適当な事言ってんじゃねぇーよ!!!惑わすのはやめろ!!!そのニヤつく顔もやめろ!!!やめろ!!!やめろ!!!やめろ!!!やめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!!」
心を失った人形のように
動かない君……
その隣で
俺は
一瞬の隙をついて
奴の持つ銃を素早く掴み
激しく床に倒しながら
馬乗りになって
何度も
何度も
顔面を強く殴りつける……
松島「ぐはっ……!!わぁぁあああ!!!」
殴るたびに
何度も殴るたびに
銃では味わえない
拳の痛みを感じ
鮮血が
雨粒のように
奴の口から溢れ出る。
宏明「わ、笑えよ!!!ほら、笑ってみろよ!!!笑えよコラ!!!うわあああぁぁぁあぁぁぁあ!!!」
松島「や……やめ……やめろ……」
宏明「何が予言だ!!!何が運命だ!!!人間なんて弱い生き物だろ!!!だから簡単に人を殺せる!!!銃なんて無くたって人を傷つけるのも簡単なんだよ!!!怖いか!!!痛いか!!!俺に恐怖を感じるか!!!何か言えよクソがっっっ!!!」
これが……
人
なのか……
松島「せ……せん……選択を……誤るな……」
宏明「黙れぇぇぇえええ!!!!!」
両手を握りしめ
渾身の力を振り絞って
奴の顔面に振り下ろした時
花びらが儚く落ちる様に
力無く
奴の体の動きが静止した。
そして
ぐったりとした瞬間
俺は銃を奪いとって
由実のもとへと急いで駆け寄る。
[残り時間……20秒]
[残り時間……19秒]
由実「い、嫌……は……放して……嫌……」
俺は無心で
君の体を強引に引き起こし
シェルターへと連れて行く……
宏明「嫌でもこのシェルターに入れ!!!これは俺の選択なんだ!!!俺は由実を選んだんだ!!!文句なんて言わせない!!!入れよ!!!入るんだ!!!」
[ガチャ……]
六角形の重い扉を必死に片手で開け
君の体を
冷たくなった体を
無理矢理
シェルター内に足から入れて行く。
由実「ひ……ヒロくん……わ……私……こ……こんなの……嫌だよ……」
君は
もう
抵抗する力も残っていなくて
ただ
固まった瞳から涙を流し続け
口だけが悲しく
小刻みに動いているだけ。
宏明「これで!!!これでいいんだ!!!これでいいんだよ!!!これで……」
由実「……。」
[残り時間……10秒]
宏明「お、俺は……俺は!!!俺は由実を……由実を……」
由実「ひ……ヒロ……くん……」
[ガチャ……]
静かに
ゆっくりと
シェルターの扉を閉めた俺は
その両手を扉に残したまま
グラグラと膝から崩れ落ちた……
宏明「ゆ、由実を……君を……本当に……愛していたんだ……最後の……生き甲斐だった……」
[シェルターロック完了……]
ロックがかかる音に
安心感などありはしなかった。
あったのは
冷酷になった自分への失望感と
ズキズキと痛みを伴う悲愴感だけ。
背後に眠る親しき死体たちが
俺の体を更にブルブルと震えさせる。
宏明「お……俺は……いったい……何なんだよ……俺は……。なぁ…………母さん…………親父…………ミユ…………隼人…………だ、誰か…………教えてくれよ……た……頼むから……」
頼むから……
母親【宏明……生まれてきてくれてありがとう。初めて名前を呼ぶわね。きっとこれから育児とか色々と大変だけど……ママはあなたの小さな命を守り続けるからね。宏明……ずっと……ずっと……あなたを愛してる。だから抱きしめさせて……。ママは幸せよ……】
宏明「か…………母さん……」
親父【宏明……いつも帰りが遅くなってすまない。ミカとお利口にお留守番してくれて本当にありがとう。父さんは仕事をしていても、宏明たちの事を片時も忘れたことなんてなかった。これは本当だ。辛いのに……良く我慢してくれたね。偉いぞ……宏明……】
宏明「お、親父…………」
ミカ【まだ寝ぼけてる(笑)昨日の夜も遅かったんでしょー。でもミカはちゃんと内緒にしてるよ。小さい時から、お兄ちゃんがいつも傍にいてくれて、ミカは寂しくなかったしね!こう見えても妹として感謝してるんだよ?さぁ、ほらほら!早く用意しないと学校に遅れちゃうよ!もう高校生なんだからしっかりしてよねーお兄ちゃん!】
宏明「み……ミカ…………そうだよな……」
隼人【お前があいつの事を好きなのは知ってる。親友なんだから当たり前だろ?俺はお前をちゃんと選ぶよ。俺にとって宏明、お前は大事な友達なんだ。だから、大丈夫。俺を絶対に信じろ!俺は裏切ったりしない!!またバイクで一緒に走ろうぜ!!楽しい世界が俺たちには沢山あるんだ。なっ?そうだろ?】
宏明「隼人……な、何で俺は……!!!」
[誘導ご苦労様でした。シェルター外の人間はこの部屋から退出して下さい。未来はこの尊い犠牲により、永遠に続くでしょう。法律により、あなた方の責任は問われる事はありません。お疲れ様でした。]
な……
何だよ……
これ……
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