LAST SHELTER


ー19ー (1/1)






蜂の巣の様に

六角形の扉が壁一面に並ぶ景色。


周りの光沢のある黒い壁は

まさに人の隠された闇のよう。


床に悲しく倒れた尊い命と

流れるのを止めた赤い血。


生きとどまる3つの命が

元々ある人の判断力を超越し

未来の選択をする為に醜く交差する。





宏明「うわあああぁぁぁああああ!!!」


松島「君が入れと俺は言ってる!!!」





誰が悪い……?



挙動がオカシイ……



誰が悪い……?



怒りじゃない力……


教えてくれ……




誰の為に……?



誰が正しい……



何の為に……




オカシイ……








まさか



俺の……



自分の……




……為?










違うっっっ!!!!!!!!!!









宏明「適当な事言ってんじゃねぇーよ!!!惑わすのはやめろ!!!そのニヤつく顔もやめろ!!!やめろ!!!やめろ!!!やめろ!!!やめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!!!!」




心を失った人形のように


動かない君……



その隣で


俺は


一瞬の隙をついて


奴の持つ銃を素早く掴み


激しく床に倒しながら


馬乗りになって


何度も


何度も


顔面を強く殴りつける……





松島「ぐはっ……!!わぁぁあああ!!!」





殴るたびに


何度も殴るたびに


銃では味わえない


拳の痛みを感じ


鮮血が


雨粒のように


奴の口から溢れ出る。





宏明「わ、笑えよ!!!ほら、笑ってみろよ!!!笑えよコラ!!!うわあああぁぁぁあぁぁぁあ!!!」


松島「や……やめ……やめろ……」


宏明「何が予言だ!!!何が運命だ!!!人間なんて弱い生き物だろ!!!だから簡単に人を殺せる!!!銃なんて無くたって人を傷つけるのも簡単なんだよ!!!怖いか!!!痛いか!!!俺に恐怖を感じるか!!!何か言えよクソがっっっ!!!」




これが……





なのか……





松島「せ……せん……選択を……誤るな……」


宏明「黙れぇぇぇえええ!!!!!」




両手を握りしめ

渾身の力を振り絞って

奴の顔面に振り下ろした時


花びらが儚く落ちる様に

力無く

奴の体の動きが静止した。


そして

ぐったりとした瞬間

俺は銃を奪いとって

由実のもとへと急いで駆け寄る。







[残り時間……20秒]



[残り時間……19秒]







由実「い、嫌……は……放して……嫌……」




俺は無心で

君の体を強引に引き起こし

シェルターへと連れて行く……





宏明「嫌でもこのシェルターに入れ!!!これは俺の選択なんだ!!!俺は由実を選んだんだ!!!文句なんて言わせない!!!入れよ!!!入るんだ!!!」





[ガチャ……]




六角形の重い扉を必死に片手で開け

君の体を

冷たくなった体を

無理矢理

シェルター内に足から入れて行く。





由実「ひ……ヒロくん……わ……私……こ……こんなの……嫌だよ……」




君は

もう

抵抗する力も残っていなくて


ただ

固まった瞳から涙を流し続け

口だけが悲しく

小刻みに動いているだけ。





宏明「これで!!!これでいいんだ!!!これでいいんだよ!!!これで……」


由実「……。」





[残り時間……10秒]





宏明「お、俺は……俺は!!!俺は由実を……由実を……」


由実「ひ……ヒロ……くん……」








[ガチャ……]







静かに

ゆっくりと

シェルターの扉を閉めた俺は


その両手を扉に残したまま

グラグラと膝から崩れ落ちた……







宏明「ゆ、由実を……君を……本当に……愛していたんだ……最後の……生き甲斐だった……」









[シェルターロック完了……]










ロックがかかる音に

安心感などありはしなかった。


あったのは

冷酷になった自分への失望感と

ズキズキと痛みを伴う悲愴感だけ。


背後に眠る親しき死体たちが

俺の体を更にブルブルと震えさせる。





宏明「お……俺は……いったい……何なんだよ……俺は……。なぁ…………母さん…………親父…………ミユ…………隼人…………だ、誰か…………教えてくれよ……た……頼むから……」





頼むから……










母親【宏明……生まれてきてくれてありがとう。初めて名前を呼ぶわね。きっとこれから育児とか色々と大変だけど……ママはあなたの小さな命を守り続けるからね。宏明……ずっと……ずっと……あなたを愛してる。だから抱きしめさせて……。ママは幸せよ……】








宏明「か…………母さん……」










親父【宏明……いつも帰りが遅くなってすまない。ミカとお利口にお留守番してくれて本当にありがとう。父さんは仕事をしていても、宏明たちの事を片時も忘れたことなんてなかった。これは本当だ。辛いのに……良く我慢してくれたね。偉いぞ……宏明……】





宏明「お、親父…………」









ミカ【まだ寝ぼけてる(笑)昨日の夜も遅かったんでしょー。でもミカはちゃんと内緒にしてるよ。小さい時から、お兄ちゃんがいつも傍にいてくれて、ミカは寂しくなかったしね!こう見えても妹として感謝してるんだよ?さぁ、ほらほら!早く用意しないと学校に遅れちゃうよ!もう高校生なんだからしっかりしてよねーお兄ちゃん!】




宏明「み……ミカ…………そうだよな……」









隼人【お前があいつの事を好きなのは知ってる。親友なんだから当たり前だろ?俺はお前をちゃんと選ぶよ。俺にとって宏明、お前は大事な友達なんだ。だから、大丈夫。俺を絶対に信じろ!俺は裏切ったりしない!!またバイクで一緒に走ろうぜ!!楽しい世界が俺たちには沢山あるんだ。なっ?そうだろ?】





宏明「隼人……な、何で俺は……!!!」

























[誘導ご苦労様でした。シェルター外の人間はこの部屋から退出して下さい。未来はこの尊い犠牲により、永遠に続くでしょう。法律により、あなた方の責任は問われる事はありません。お疲れ様でした。]








な……




何だよ……




これ……






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