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松島太一……
この男はいったい……
宏明「な、何で……ここに……」
抱きしめていた両手を妹から放し
俺は妹の体を守る様に
自分の背後へと隠した。
松島「途中でミカちゃんと偶然出会ってさ。それで……優しいミカちゃんは一緒に行こうって誘ってくれたんだよ(笑)」
また笑う……
笑うな。
そのニヤけ顔がムカつくんだよ。
ミカ「行く場所がわからなくなってたみたいで……一人で怖かったから一緒に……」
な
何が目的なんだ……
まさか
俺たちをうまく騙して
安全な場所まで
一緒に行くつもりなのか!?
松島「そうかぁ……君の妹さんだとは思わなかった。これも運命だね。」
その可能性はありうる。
宏明「運命なんかじゃない。これは現実だ。」
隼人「妹のミカちゃんは知ってるけど……宏明、この男とは……知り合いなのか?」
妹はいい……だけど!!!
宏明「ち、違う。知り合いなんかじゃない。ただの他人だ。」
親父「だが……お前を知ってる様に話して……」
宏明「違うって言ってるだろ!!!」
由実「……。」
コイツを
連れて行くのか?
一緒にいて
安全なのか?
明らかに怪しいし
ここにいる知り合いとは訳が違う。
安全なんて言えない!!!
松島「さぁ……その先には『シェルター』という名の安全な場所がある。宏明……君は絶対そこに行かなきゃならない。それは現実じゃなく運命だ。」
意味のわからない事を言うな!!
混乱するだろ!!!
やめろ!!!
やめろ!!!
宏明「だ、黙れ……」
俺の忠告を無視し
松島という男は
ゆっくりと俺に近づきながら
語りだす……
松島「人間が人間である由縁……。最後の救いを求める世界……。人を追求する哲学者の行き着く場所……。蓮の花が咲き乱れ、天上天下唯我独尊が真実かどうか知り得る聖地……。」
宏明「だ、黙れって言ってんだろ!!!テメェは頭がいかれてんだよ!!!どうせ精神病院から抜け出した病人なんだろ!?俺たちを惑わし、利用する気なんだ!!!テメェの思惑なんて俺は知ってんだよ!!!」
苛立ちが頂点にたち
銃を持つ震える手が
自然と松島という男の顔に向く。
由実「ひ、ヒロくん!?」
違う!!!
そうじゃない!!!
そうじゃないんだ!!!
ミカ「お兄ちゃん!!やめて!!!」
クソッ!!!
何なんだよ!!!コイツは!!!
何でこんなにも俺を苛つかせる!!!
松島「病人……かぁ。そう……そうだね……この世界の人間は……全て病人なのかもしれない。」
ドクッ!!
ドクッ!!
ドクッ!!
ドクッ!!
俺は初めて持った銃の重さが
わからなくなるほど心拍数が上がり
冷や汗をかきながら
ゆっくりと口を開く。
宏明「わ、悪いが……あんたを俺たちと一緒には連れて行けない。」
嫌な予感がするんだ……
……………………………………………………………
2度目に会ったあの時と同じ……
嫌な予感は的中していたんだ。
あの時
強引にでも
撃ってでも
ついてこられない様にしていれば!!!
松島「人は常に生きる選択をしている。毎日の生活の中で常にね。朝、御飯を食べるか食べないか……学校や仕事に行くか行かないか……友達と一緒にいるか一人でいるか……愛する人を真摯に愛するか憎むか……人に優しくするか傷付けるか……沢山あり過ぎて言い切れない(笑)きっと……選択しなければ、人は生きてはいけない運命なんだろうね。」
もうダメだ……
気持ち悪くて眩暈や頭痛がする。
宏明「……。」
松島「まぁ、雑談はこの辺にして……主導権は俺だからね。では……さっそく最後の選択をさせてもらうよ?」
ゆっくりと銃口が俺に向く……
やめろ……
やめろ!!!
宏明「やめろ!!!お前にそんな権限はない!!!」
そう叫んだ俺に
奴はニヤニヤとしながら
冷たい返事をする。
松島「いいや……選択するよ。あの残り1つしかないシェルターに……」
ドクッ!!!
ドクッ!!!
ドクッ!!!
ドクッ!!!
宏明「やめろっ!!!やめろって言ってんだろ!!!やめてくれ!!!もうたくさんなんだよ!!!俺が選択してこれで終わりなんだよ!!!勝手なことするな!!!」
ここまできて!!!
やっとここまできて!!!
人を殺してまでも選択して!!!
お前なんかに!!!
突然現れたお前なんかに入れさせるか!!!
このシェルターは由実のものだ!!!
絶対に渡さない!!!
絶対に入れさせない!!!
絶対に!!!
殺してでも!!!
たとえ殺されても!!!
俺は絶対にお前を入れさせない!!!
松島「宏明、君が入るんだ……。」
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