LAST SHELTER


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これで……


これで……


もう……


選択しなくていい……




選択しなくて


いいんだ……






宏明「…………。」






床に倒れた乱雑な3つの死体。


今となっては

俺の目に映るこの景色が

ただの

絵画かオブジェの様にしか見えない。









《残り時間……1分。》



《残り時間……1分。》



《シェルターロックの準備に入ります。》










拳銃に残された弾は一発だけ。



これで


よかったんだ……


これで……






宏明「ゆ、由実……さぁ、早くシェルターに……」






【君は忘れていないかい?】





な、なんだよ……





【大切なことを忘れていないかい?】






どこからか聞こえる


男の声……






由実「も、もう……どうでも……いい……。もう……いい……」






俺は雑音の様に聞こえる男の声を無視し

手にしていた拳銃をそっと床に置き

座り込んだ君の手を

優しく掴んで

引き上げようとする。




でも……










由実「さっ!触らないで!!!」









君は

君は

まるで狂ったか様に

俺の手を激しく振り払ったんだ。






宏明「ゆ、由実……違うよ……。俺は君を選択したんだ……。こうなったのは……仕方ない事だったんだよ。」


由実「ち、近付かないで!!!嫌!!!人殺し!!!どっか行って!!!嫌ぁぁぁぁぁああああああ!!!」






ま、待てよ……


どうしてそうなるんだよ……


意味がわからない……


なんで……


この選択が間違ってるって言いたいのか?






宏明「由実……勘違いしないでくれ……俺は人殺しなんかじゃない……」






そう……


ただ


俺は


生きる『選択』をしただけなんだ。







由実「もう消えてぇぇぇえええ!!!」






【君は完全に忘れている。】





またお前か……


何が言いたい。





【この部屋に生存する人間が……】



【2人だけじゃないことを……】












……何!?










[カチャ……]







背後で


誰かが


何かを拾う小さな音……







ドクッ!!




ドクッ!!




ドクッ!!




ドクッ!!










「君は俺を忘れている……。」









その声に


その声の方に


動揺をしながら振り向くと……









松島「俺の存在すら……君は忘れてしまったんだね。君のお父さんとなんら変わらない、哀れな……殺人鬼くん。」








き、貴様は!!!




松島太一!!!







……………………………………………………………






「そ……その先は……高齢者用の……」







[バンッッッッ!!!]








宏明「っ!!!」






薬莢の匂いが辺りを漂い……


迷彩服の男は


力無く前のめりに倒れていく。



見物人たちは口々に悲鳴をあげ


親父は青ざめた顔で


ガクガクと震えながら


拳銃を床に落とした。






親父「ど……ど……どうして……わ……私は……」





そんな中


俺は


この状況下で


おかしいほど自然と冷静で


親父の落とした拳銃のもとへと


小さく呟きながら歩いていく……





宏明「忘れているんだ……人は……忘れているだけなんだ……」





端から見たら

俺の今の表情は

ただの心を失った人形にしか

見えないのかもしれない。


でも

誰かが殺された事実より

今の俺は

選択する主導権が欲しかった……







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