LAST SHELTER


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【秋葉で起きた事件は迷宮に入るほど、人知を超えた何かを平和ボケした国民にその傷跡を残した。】


【人は人を変える事が絶対にできない。だから人の為に自分を変えなきゃならない。】


【大切な命に向き合う覚悟があるのか?他の命を頂きながら生き続けている人間に。】





宏明「うるさいんだよ!!!頭ん中で勝手に喋んな!!!」




俺の頭にノイズの効いたメッセージが苛つくほど湧き出てくる。

その痛みに耐える様に片手で頭を抑え

俺は怒りと共に隼人へ銃口を向けた。





由実「だ……ダメ……ダメだよ……。そ……そんなこと……したら……もう……





何が生きる権利だ!!!

何が大切な命だ!!!

そんなもん知るか!!!





隼人「お……俺たち……親友……だろ?」





答えは複数じゃない……

答えはたった一つだけ。


シェルターへのアラームが鳴り響く中

カウントダウンが俺の選択を迫ってくる。





宏明「もう……もう消えてくれ。」





俺の手にしていた銃の引き金に指の強さが増し

ゆっくりと

それはゆっくりと

動いていく……





隼人「ひ、宏明……俺は……俺は……お前が!!!」


宏明「必要ない。」









[バンッッッ!!!]








由実「キャァァァアアア!!!」







火薬の臭い匂いと

銃弾を額に浴びた隼人の血を撒き散らしながら倒れゆく姿。


悲鳴をあげる由実と妹を尻目に

俺は涙すら流さないまま

銃を持った片手を下げた。


そして

冷静に弾の数を確認しているんだ。


まるで

人間らしさを失った殺人鬼マシーンの様に……








《残り時間……3分。》



《残り時間……3分。》








さぁ……次だ。







………………………………………………






隼人「大丈夫か……?宏明、お前……


宏明「……。」





大丈夫なわけない。

母親の死を目の当たりにして

更に由実のお兄さんまで……


俺がこの一本道に続く直線を進んでいるのは

この地獄の様な世界から

抜け出したい一心なんだ。


ただ

それだけだ……





宏明「由実……俺のそばから離れるな。」


由実「……。」




由実の硬直した瞳。

彼女の震えが止まらない肩を抱き締めながら

俺は前へ前へとゆっくり進む。




父親「ま、まだ……信じてくれないのか。」


宏明「黙れ。」





こんな世界になって……

何を信じろって言うんだよ。





隼人「ど、どうして……こんなことになっちまったんだ……





そんなもん

知るか……


もうめちゃくちゃなんだ。

この世界は平和じゃなく

見事に壊れ崩れたんだよ。





宏明「……。」





ただ

見えないゴールを目指して歩きながら

馬鹿みたいに感じていた。


後ろからついて来る

あの親父の手にしている拳銃……


その事実が

俺の主導権が無いと知らせている。




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