LAST SHELTER


◎―11― (1/1)






【宏明……今まで父さんや母さんに心配ばかりかけてきたお前だったが,最近は違うとわかってる。】



【こうやってガミガミ言うのも,お前の為なんだ。本当はな……父さんも幼い頃から,お前にあーだこうだと言い過ぎた事を今更になって反省してる。悪い父親だった。】



【ただ……宏明が高校生になって,ちゃんと学校に行くようになった事は本当に成長したなと思って父さんは嬉しかった。】



【まぁ……とにかくこれから頑張れよ。宏明。】





今まで


反抗期の俺が


親父に迷惑をかけた事は数知れず。



怒鳴りつけて叱る親父に反抗し


中学時代は道から外れそうになった過去も


引き戻してくれたのは


きっと親父や母さんがいたからだと思う。



だけど


その小さな失敗でさえ


こんな狂った世界にいれば


ただのお遊びの様に思えてしまう。



人なんて


逃げ場なく追い詰められれば


肉親を簡単に殺せる


殺人鬼にだってなれるんだ……



人は


失敗を何度も繰り返し


成長するって言うけど


これは


もう成長するとかそういうレベルじゃない。



生きる選択が


死の選択へと


俺を狂わせながら導いた事実。





隼人「ひ……宏明……!?マジかよ……。お前……親父さんを……親父さんを……。」


「パパ!!!パパぁああああ!!!」





この密室の小さな空間の中で


無惨に転がった父親の死体。


涙なんて出る暇もない。



震える手が


もう俺の思考回路さえ複雑に変えてしまった。



これは


俺にとって


危機迫る緊迫した状況下での


苦渋の選択だった。



疑う事で


恨む事で


消去法で答えを見つける事によって


親父へと


無理矢理引き金をひいたんだ。



もう


口から出ていく言い訳も


虚しさや


罪悪感しか残らない。





【これが俺……】



【これが俺の下した最初の選択……】





もう


平和だった自分に戻る事はないだろう。


人間らしく優しかった自分が現れる事もないだろう。



今は


選択した事を正しいと認識し


親父は苦しまずに死んだんだと思い


次の選択へと委ねるだけ。



もう


それしか俺には出来ない……





隼人「どうして……どうしてこんな事になるんだよ!!!何で!!!」


宏明「こいつは……こいつは!!!母さんや由実のお兄さんを殺したんだ!!!人殺しなんだよ!!!だから,死んでも仕方がないだろ!!!」


隼人「し……死んだって……お前。ひ,宏明が殺したんだろ!!!」





隼人が泣きながら俺に叫ぶ姿。


内心は自分が殺されなくて良かったなんて思ってるんだろ?


今ごろ偽善者ぶるなよ!!!





宏明「うっせーんだよ!!!助かるのはたった一人なんだ!!!次は誰かを殺さなきゃいけない!!!もう時間がないんだよ!!!どうせ時間切れになれば,皆ここで死ぬ運命なんだ!!!」





次の選択は……


選択は!!!





ドクッ……ドクッ……ドクッ……










[シェルターがロックされるまでの時間……残り5分。]










機械的なアナウンスが俺達のいる部屋に流れ


選択せよと俺に答えを求めてくる。


残された4人の間には


冷や汗と何ともいえない緊張感が走り


俺はまた銃を構える。





由実「ひ……ヒロくん……もうやめて……。お願い……もう……やめて。狂ってるよ……。」





由実にはわかってない!!!


俺は好きでこんな残酷な行為をしてる訳じゃないんだ!!!



残酷な選択をしても


君を


大切な君を


守るのが


俺の使命なんだよ!!!


死んだ君のお兄さんと約束したんだ!!!





宏明「俺は……地獄に堕ちても……選択する!!!」


由実「どうして!!!もうどうでもいい!!!こんな事しても意味なんてないもん!!!もう嫌ぁぁあああ!!!!」





だったら君はどうするって言うんだ!!!


一つしかない席を


椅子取りゲームの様に仲良く取り合いするのか!?


そんなの馬鹿げてるだろ!!!





宏明「次は……次は……。」





俺の狂った瞳が


立ち並ぶ3人に向く。



精神的にも限界を超え


俺は選択するんだ。





次は



親友か……



妹か……



恋人か……



自分か……





宏明「もう誰も……俺を止められない。」



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