LAST SHELTER


◎―9― (1/1)






もう


理性や


モラルも


この場所には存在しない。



君にもわかるだろ?


人間は追い詰められたら


危険な存在に変わる。



君ならどうする?


どう選択する?


教えてくれ……





由実「ヒロくん……怖いよ!!!私,怖い!!!ヒロくんが……変わってしまったみたいで!!!どうしたらいいの!!!」





涙を流してうずくまる君の姿……





宏明「由実……。」





そうだよな。


今までの俺からしたら


こんな事を平気で出来る奴だなんて思ってもいなかっただろうな。


君にはきっと俺の気持ちがわからないんだ。


君のお兄さんから受け取った使命は


引き継がれて


俺が君の盾になっている。


それをわかってくれないのは


マジで辛い。





宏明「………。」





正直


俺にも


この選択が正しいのかなんてわからない。


むしろ無理して選択しなきゃいけない事なのか?


それすら見えてないんだ。


重症だろ……





「宏明……本当にやめなさい。殺人鬼にでもなりたいのか!!!」


宏明「あ……あんたにだけはそんなこと言われたくない!!!」





見えない闇がグルグルと頭を駆け巡り


蜂の巣の様に並ぶ


六角形のシェルターたちが


まるで俺を尽き動かしている様な錯覚まで起きている。


コントロールさえ失ってる自分。





隼人「マジでごめん!!!宏明!!!俺は何でもするよ!!!撃たないでくれたら何でもする!!!だから頼む!!!親友を撃たないでくれ!!!」





ドクッ……



ドクッ……



ドクッ……



ドクッ……





心拍数が次第に上昇し


額からは汗が流れ落ちていく。



そして


一握りの迷いが躊躇いを生む。





それでも


誰しもが


この状況なら


選択しなければ全員死ぬとわかってるなら


こう判断するはず!!!










[バンッ!!!]










「!!!」





銃声は



この室内に響き渡り



銃口から煙りが欝すらと見える。





宏明「はぁ……はぁ……は……なんてことしたんだ……。」





撃ってからでは



遅すぎると



切り裂かれた心が



そう呟いていた。





…………………………………………………





走れ……



早く走れ……



それは



この先に



ゴールがあると信じているから。





隼人「ハァ……ハァ……ハァ……。」


宏明「先が見えない……ハァ……ハァ……。」


隼人「俺もこの先はわからない。でも進まなきゃだろ?」


由実「もう……きつくてこれ以上走れないよ。」


宏明「頑張れって!!!早く先に行かなきゃ!!!」


由実「うん……。」





真っ直ぐ続く


薄暗い一本道。


その通路は果てしなく


酸素さえ薄く感じる程。



それでも


しばらく3人で必死に走った。


走れるだけ


ずっと走った。





そして





隼人「ハァ……ハァ……宏明!!!扉が見えたぞ!!!」





隼人の視線の先に


小さく見える扉が視界に入ると


走る辛さが喜びへと変わる。





宏明「やった!!!次の扉だ!!!」


由実「ハァ……ハァ……ハァ……。」





残り少ない体力も限界に近付いてきて


俺たちは


その扉が


まるでオアシスの様に見えたんだ。





だが……










[カチッ……。]










俺たちは


限界のあまり


人影に気付いていなかった。


それが誤算だった。





「止まれ!!!お前ら止まれって言ってるだろ!!!」





銃口が向けられた状況を見て


俺たちは一瞬に恐怖へと変わり


走っていた両足が自然と立ち止まった。





隼人「や……ヤバいぜ。あいつ,銃を持ってる。」


宏明「ハァ……ハァ……ビビんな。どうせ本物じゃないさ。おもちゃだろ?」


由実「………。」





ドクドクと高鳴る心臓音。


緊迫感が辺りを包み


俺達3人は


一人の男性らしき人間と


数メートルの距離で対峙していた。





「お前ら何故ここに来た!!!見るからにガキだろ!!!この先には行かせない!!!先に行こうとすれば皆殺しだ!!!」





最初は薄暗くてあまりよく見えなかった男の姿が


次第にはっきりと目に映っていく。





宏明「ま……まさか……。」





これは現実なのか?



それとも酷い夢なのか?



状況理解は全てを超えていた。



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