LAST SHELTER


◎―3― (1/1)






【近年,世界の需要は変化しつつあります。無論,残り少ない石油でも新しいエネルギー資源でもありません。今……もっとも人類が必要とするもの。それは,自分の命と心を守る保障だと言えるでしょう。】





何故こんな事を思い出して


大切なことは一切思い出せないのか……


ただ思い出したくないだけ?





【今日未明,母親が我が子の身代わりになり死亡する事故が起こりました。】





はっきりと


俺のビジョンは見えない。


見えるのは見逃していたニュースだけ。





【出生率は過去最低になり,高齢化が加速する中でこの問題が世界へ拡大しています。】





わかっているのは


ただ前へ進むという事だけ。


単純なんだけど


単純じゃない。





【世界各地でデモが発生し,政府は治安部隊で抑える手段に出ましたが鎮圧できず。辺りは火の海へと化しています。これを重くみた国連の最高議長……】





きっと


人が人であるべきため……



または


正しい道に進むために


俺は前に進んでると伝えてる?


まさかね……





【日本で安楽死制度の見直し要求が問題になっています。あなたは賛成派?それとも反対派?】





そんな事どうでもいい。


今は必死に生きること……


それだけなんだ。


わかってるだろ?





「ハァ……ハァ……ねぇ,教えて。何で私を一緒に連れてきたの?」





何故?



何故?



確かな答えはわからない。



でも





「俺はただ……。君が必要だから。」





立ち止まった二人の姿に見えるもの。


きっと


思い出す必要がある。


互いの存在価値を……





「私は何?」





そんな事……


今更言うなよ。





「俺の大切な人。」





大切な恋人。





「その選択はあってる?」





愛する気持ちが強く思い出される中


俺は体が熱くなり


目から涙がたくさん溢れてくる。





「そんな事……俺に言うなよ!!!これが間違いなんてわかんのか?俺だってわけがわかんないんだ!!!何故走ってるのかも!!!」


「……ごめん。」





違う。


違うよ……





「俺も……ごめん。熱くなっても意味ないのに……。」





俺は君を強く抱きしめ


迫りくる暗闇と


残り少ない時間を


肌で感じながら


守ろうとする。





「大好きだよ……。だから,俺を信じて。マジで頼むから。」





君はゆっくりと頷き


涙で服が濡れていく。





「わかんないけど……私,怖いよ。」


「大丈夫……。俺がいるから。俺が必ず守ってやるから。」


「……うん。」





こんな約束をして


いいのかな……



わからない。


でも


これだけは素直に言えるから。










【愛してる】って……










だから


約束するよ。





「俺は君を選択する。絶対に……」



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