pupil play
[001](1/5)

夢を見た。

自分で夢を見ていると判る夢だ。

とても出来の良い、それでいてところどころの些細なぎこちなさが目立つ、リアルなようでいて全体的につくりものめいた、CG動画をでも見せられているようだった。

「……はい、みんな静かにして。そういう訳で、これから藤沢さんはこの5年2組の新しい友達になります。みんな仲良くね」

そこは学校、それもどうやら小学5年生の教室らしかった。

実際に私が小学5年生だったのなど、どれくらい前のことになるだろう。

見た限り、夢の中の私も実年齢に相応の身長、相応の体型だ。

しかし、今私のことを転校生として紹介した女教師も、30人はいるだろうクラスの子供達も、そんな私になんの違和感も感じてはいない様子だった。

そこは、まぁ、夢の中のことだものね……

そう思うと、なんだか頬がゆるんだ。

「……どうしたの、藤沢さん? 自己紹介して」

「え? あ…… はい!」

女教師に促され、一歩前へ。

教室中の視線が自分に集まるのを感じた。

「あ、あの、藤沢奈緒です」

ずっと年下の子供達を相手に敬語を使っている自分がおかしくもあり、気恥ずかしくもあった。

小学5年生を相手にどんな自己紹介をしたらいいのだろう。

やはり私自身10歳か11歳の子供らしく振る舞うべきなのか。

本当にそんな小さかった頃、私はどんなだったっけ。

そんなことを考えて、しばらく言葉に迷った。

すぐに吹っ切れた。

どうせ夢の中のことだ。

好きなファッションブランドや芸能人、休日の過ごし方、好きな男性のタイプまで、教室の反応など一切気にせず、自分のことをありのまままくし立てた。

コンパで自己アピールに必死な女みたいだな、と内心苦笑しながら。

さすがに叱られるかと幾度か先生の方をふりかえったが、ずっとやわらかく微笑んだまま、私の話を止めようともしない。

私の話をどれくらい理解しているのか、子供達の反応もどちらかというと好意的なようだ。

結局夢だからということなのか。

それならばもっと赤裸々なことまで言ってしまっても良かったのかな、と思いながら、よろしくお願いします、でしめて深々と頭をさげた。

なかば義務的な拍手。

それが静まるのを待って、先生は言った。

「それじゃ、みんなから藤沢さんに、なにか聞きたいことはある?」


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