Lilium maculatum Thunb.


LmT.8(1/14)





一年で一番忙しない時期と言えば
年末年始で、
それを過ぎた春先は
その暖かさも手伝って
毎年決まりごとのように
つい脱力した日々を送ってしまう。




「だいぶ暖かくなってきたね。
春は眠くなるなあ」



今年も今年とて
昼間からやる気の起きない身体を
テーブルにだらしなく伸ばし、
同じくだらしない言葉を口から零す。

しかし、
今年は例年と異なる部分がひとつある。



「百合子は年中眠いでしょ」

「奈々も夜になるとねむくなるよ」

「それは普通のことだから大丈夫だよ」



今年は私の零した独り言のようなそれに、
返事をしてくれる人が傍に居るのだ。

しかも二人も。



「京はさあ、
なんで当たり前のようにうちに居るの?
最近毎日居るよね?
何?嫌がらせ?」

「嬉しいくせに」



いつの間にか定位置と化した
奈々の隣の席に腰掛ける京に
じとりとした視線を送りながら問えば、
嫌味なくらいキラキラとした笑みを向けられる。

それに舌打ちを返して顔を逸らすと、
京の口から漏れ出た小さな笑い声が
耳に入ってきた。









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