Thistle
[《テイサツ》](1/27)
涼しい風、揺れる木々。
私は、外の駐車場にいた。
「はぁ……なんでこうなっちゃったんだろう」
溜め息混じりに呟き、髪を撫でて通り過ぎた風を見詰めた。話を戻せば、あの時の仁井鳴さんは演技で、私と出掛けるための口実を作りたかったのかも知れない。ーーまぁ、分かりもしない事だけど。
「それにしても遅いなぁ。自分で誘っておいて……三十分も待たせるなんて」
ブツブツ文句を言いながら、俯いていた顔を上げると、視線の先の方向から人が歩いてくる。
次第に近付いてくる人物をしっかりと瞳に映した私は、目を見開いた。
「あ……え?」
その人物は、確かに先程まで一緒にいた仁井鳴さんだったが、明らかに服装が変わっていた。
「え? に、仁井鳴さん!?」
仁井鳴さんの格好はーー漆黒のスーツから、ボルドー色のTシャツに、ダメージ加工が施されたサックス色のジーパンに様変わりしていた。
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