廻り合いの中で

◇[第二章 苦難](1/40)

 アリエルが訪れてから、二週間後――

 名物と化した爆発が響く。

 文字の読み書きはある程度覚えてきていたが、機械の操作に関してはからっきし。どうやら機械との相性が悪いらしく、アリエルが操作を行うと機嫌が悪くなってしまう。結果、見事としかいいようがない爆発を起こし、周囲に黒煙を充満させ毎回技術者の手を煩わせる。

 しかし彼女が破壊している物は家電の類で、イシュバールの根底に関わる部分には一切触れることはしない。スパイ疑惑の影響で尚且つ破壊工作をしていると勘違いされていたが、破壊する物が物なだけに、それは間違った考えではないかと思いはじめる者も多かった。

 破壊ばかりするアリエルにいい顔をしない技術者も「面倒」とぼやきつつも、きちんと修理を行ってくる。それこそが少しずつ信頼している証拠だろう、周囲の変化にアリエルの不安感も徐々に解消されてきたが、だからといって完全にイシュバールに溶け込むのには時間が足りなかった。


◇◆◇◆◇◆


「今日も、やったのか」

「結構、派手に」

「覚えないのか?」

「一応、周囲が教えているみたいだけど……」

「物覚えは?」

「悪くないと……思う」

 そのようなやり取りをしているのは、セネリオとアゼル。テーブルを挟んで向かい合って座っている親子は今、朝食の真っ最中。その中で話題に上がっているのはアリエルで、アゼルも彼女の爆発の件が気に掛かるのだろう、セネリオに詳しい状況について説明を求める。

「仕方ないよ」

「使ったことがないからか」

「僕だって、いきなり未開惑星に行ったら何もできない。こう言ってはなんだけど、文明の低い世界は……」

 息子の言いたいことを理解したのだろう、アゼルが納得したように頷き返す。彼女は彼女なりに懸命に頑張っているので、周囲がとやかく煩く言うべきではない。低い文明社会から見たこともない高文明の世界に迷い込んでしまったのだから、戸惑いの方が多いのは仕方ないとアゼルは話す。


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