■自己採点ライフ (1/1)
自分は100点?それとも0点?
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一花「ふぅ……。」
私は家に帰り着くと決まってする事がある。
それは手帳のカレンダーにペンで数字を記していく事。
一花「今日は82点。」
一日一日をまるで小学生がおこずかい帳をつける様に点数をつけている私。
いわば自己採点。
これをする事でその一日をどう生きてきたかわかるから始めたんだ。
この思春期を無駄に生きない為に。
そう
あの日から……
…………………………………………………
大輝「お前は俺らとは違うよ。恥ずかしいんだろ?世間の目が。こんな趣味があるなんて知られたくないんだろ?ハッキリ言えよ!!!どうせ俺らを馬鹿にしてんじゃん!!!」
そんな事ない。
私だって……
大輝「そうやって隠してる時点で一花は別の人間なんだよ!!!もう俺らとは仲間じゃない。」
大輝……
私も『同じ』だよ。
そう言いたくて
でも
冷たい皆の視線が悲しくて
言えない。
大輝「一花は『普通』になりたいんだよな。それが普通なんだよな!!!自分を隠して生きる事が!!!じゃあそうやって死ぬまで生きていけよ!!!」
私の大切な仲間。
その同じ趣味や生きがいを持った大輝たちを裏切る形になったのは私のせい。
一花「………。」
『普通』じゃなきゃ……
きっとこの現実世界を何事もなく生きていけない。
自分を偽ってでも
私は染まるべきじゃない。
そう思ってしまうから!!!
大輝「二度と来んなよ。」
…………………………………………………
幼い頃からアニメやマンガが大好きで
二次元の世界にどっぷりと浸かっている私。
それでも
部屋の中は普通の女子高生の部屋と変わらない。
その趣味さえ感じさせないほど
今風らしく飾られた部屋。
一花「大輝……。」
結局のところ私は自分の中でこの生きる原動力を正当化できないでいる。
きっと現実世界を毎日生きていくにはアイデンティティーが誰しも必要で,その原動力がなんなのかわかってるくせに隠しているんだ。
だから
同じ目線で話せて心から友達と呼べた大輝も私の前からいなくなったんだよね。
大輝は他県の高校だったから連絡が途絶えてしまえばそれで終了。
人間関係なんてこんなもの。
本当は悲しい?
寂しい?
一花「そんなことない。自分がそれでいいと思う事をしてるだけだし。」
一人でも私は生きていける。
誰にも知られずに生きる事が幸せだと感じるから。
あんな闇があるクラスも私には関係ない。
普通でいられればそれでいい。
一花「………。」
私は本屋で買ったお気に入りのマンガを手にして『無』の状態へと誘われる。
この時間がとても心地よく感じる私。
…………………………………………………
SEVEN「いいと思うよ。別に隠す事じゃないじゃん。」
高1の時に同じクラスだった細貝くんの言葉。
休み時間に必死になって鞄の中に隠した私の『生きがい』。
見られた事で
恥ずかしくて顔が赤くなり
普通じゃないなんて思われないか不安になっていたんだ。
それでも細貝くんは……
SEVEN「自分の大好きなものがあるっていいよね。面白いなら今度貸してよ♪なんてね(笑)」
ただ単純に
優しかった。
凄く優しくて
私を何かから守る様な透き通った目。
自己否定さえさせない様な笑顔に
私は自分を忘れていた。
…………………………………………………
ダメだよ。
あれでレイが変わってしまったんだから。
あの『0点の日』を思い出す必要なんてない。
もう終わった事なんだから。
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