6×6BLOCK【裏】


■変換 (1/1)

雨の中,一瞬だけ見えた彼の姿に胡桃の見方が変わる。





一人になりたかった気持ちとは裏腹に


突然現れたチャラ男。



でも


彼のふざける姿を見てると


何故かそんな気持ちもいつの間にか忘れさせてくれるみたいだった。


変な感覚。


あんなに辛い気持ちだったのに……



まさか彼の無邪気な爽やか笑顔に騙されてる?


違う!!!違う!!!



蒼真「?」



彼が濡れた金髪の毛先を触りながら私を見つめてる。


肩が彼の腕に密着してて動揺する私。





ドクッ!!!ドクッ!!!ドクッ!!!





こんな距離でいると恥ずかしいよ!!!


落ち着いて胡桃。


ここは冷静に……



胡桃「あの……本気で私の傘から出てって。」


蒼真「無理♪だって濡れるし。」



いくらさっきのクラスの事を忘れられるって言っても


この状況はマジでありえない!!!



胡桃「濡れるって,傘を忘れるのがいけないんだよ!」


蒼真「うん,正解。」



そんな事を思いながらも彼と一緒に歩いてる私も私。


それでも


男子の免疫不十分で


どう対処していいのかわからないし


本当に困ったな。


どうしよう……





――…と


そんな時


視線の先に交番が見えたんだ。



きっと使える!!!



そう考えた私は交番に指を差して彼に言った。



胡桃「あっ!!交番!!もう警察を呼ぶから!!!」


蒼真「俺,まさかの逮捕?」



まさかじゃありません!!!



胡桃「ここに変態がいまぁーす!!!」


蒼真「その勇気スゲー。まぁーいいかもね(笑)この世界はマジでつまんねぇーし。」


胡桃「つまんないって……」



歩きながら


しばらく


二人の間に沈黙が続いていく。


早く離れてほしいけど中々言えない私。





[ザァァァーー………]





雨音だけが鮮明に聞こえてくる。



そして



そんな沈黙を消す様に



彼がゆっくりと私に言ったんだ。










蒼真「きっとこんな暇な世界なんて……生きてる価値もないのかも。」










生きてる価値……





彼の言葉を聞いた瞬間


雨音が止まった様に感じたんだ。



そして……


複数の入り乱れた雨の線が背景に映る中


彼の表情が一瞬で冷たいものに変わっていた。


私はそんな彼を見ながら


静かに立ち止まる。



蒼真「俺っていつもこうなんだ。なんか……うまく生きてる奴らみたいにできたらいいんだけど……これだから。マジでダメな奴。自分でもわかってる。」



冷たい表情で必死に作り笑顔を見せる彼。


私は


もしかして


勘違いしてたのかな。



胡桃「そんな事……私に言われたって。」


蒼真「迷惑……言わなくても知ってる。マジでごめんな。」



彼の本当の姿は


きっと違う?


一瞬で感じたこの彼の世界は,見た目以上に何か深いものが眠ってる。


そんな感覚を肌で感じて


私は言葉が出てこなくなっていた。



胡桃「………。」


蒼真「ただ……なんか元気がなさそうだったから声をかけただけ。他人がする事じゃないか。じゃあな!」



私の傘から出て


雨の中を走っていく彼の姿。



胡桃「ちょっ……濡れるよ!!!」



思わず出た言葉は


拒否という2文字とは逆だった。


何故かわからない。


でも……



蒼真「俺って不器用だけど……可愛いって言ったのはマジだから!!!傘,ありがと!!!元気だせよ!!!」



急に立ち止まって


馬鹿みたいに笑いながら


雨に濡れて叫ぶ彼。



胡桃「………。」



その彼の姿が背中を向けて走り去っていく。


私はただ立ち尽くしたまま


その言葉に


何か不思議なものを受け取っていた。



胡桃「元気だせ………かぁ。」



最初は軽い男子だと思ってたけど


やっぱり


本当は違うのかもしれない。



本当は


自分をうまく出せない人なのかな。





胡桃「新垣……蒼真。」





私の頭の中で


自然に


『チャラ男』から


『新垣蒼真』へと名前が変換される。



それは


私が少しでも彼に関わった事で


運命が細かく分かれるみたいに


変わっていく未来の証なのかもしれない。



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