6×6BLOCK【裏】


■表裏 (1/1)

背中合わせの世界。いずれ変わるものは気づいたタイミングでそれを知る事になる。





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周りの景色が闇へと変わる頃



俺は花音と街中をしばらくブラブラした後,駅で別れて自宅へと帰っていた。


玄関では汚い靴が数足放置されたままで


足で出されていないゴミ袋を退かしてリビングへと向かう。



母親「そ,蒼真……お帰り。遅かったのね。」


蒼真「黙れ。」



ソファーに座りながらテレビを見ている母親を睨みつけながら言い放つ俺。


相変わらず俺を警戒してる。


まだ反抗期だと勘違いしてんのか?


マジでくだらない。



母親「ごめんなさい。あの,夜ご飯が出来てるけど……蒼真はどうする?」


蒼真「クソまずい飯なんているわけねぇーだろ!!!」


母親「ご,ごめんなさい!!!」


蒼真「その前にこの家をどうにかしろよ!!!何回言ってんだよ!!!」


母親「ちょっと仕事で疲れてて……。」



ただの言い訳だろ。


今まで俺がしてきた事を


あんたは出来ないだけ。


全て俺にさせてきた代償。


今更変わるのは無理って?



蒼真「マジでふざけんな。いちいちいらつくんだよ。」


母親「あ,明日はちゃんと片付けるから怒らないで……。」



震えながら目線を反らす母親。


俺はそんな事も目にしたくない一心で背を向けた。





[バタンッ!!!]





そして


リビングの扉を壊れるぐらい強く閉め


ムカつく気持ちを抑えながら2階の自分の部屋へ向かう。



蒼真「クソッ!!!」



子供はいずれ親を超える時がくる。


それはどのタイミングでやってくるかはわからない。



ただ……


超えてしまった時


俺は感じてしまったんだ。










【こいつを殺したい……。】










って。





蒼真「はぁ……。」



深く溜息をついた俺は


自分の部屋の鍵を開けて中に入り


制服を着替えながら矛盾した空間に苦しんでいく。



蒼真「また同じ……。」



帰れば元に戻ってしまう無限ループの世界。


いつの間にか表裏が変化してて


それでも俺は憎しみや復讐心でさえ


この手で表現する事を拒み続けてる。


今だにあんなに辛い思いをさせた母親に手を出した事はない。



なぜ?


あんな奴でも親だから?


男好きの淫乱女が?



蒼真「知るかクソ!!!」



簡単だ。


俺がまだガキだから。


小さなガキのままだから


あいつを殺せない。


自分の心にヒーローがいると信じてる時点で抑えられてる。



蒼真「………。」



ただ



早く見つけないと



もう止められないかもしれない。



この手が動き出すのも時間の問題。



どれが『正義』で『悪魔』か……



きっと



もうすぐ知る事になる。





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[ガチャ!!!]





胡桃「!!!」


未来「胡桃,見て見て!!!この雑誌のモデルさんが着てる服,超可愛くない?」



突然部屋に入ってきた未来に驚き


私は咄嗟にノートを閉じた。



胡桃「未来!?部屋に入ってくる時はノックしてよ。」


未来「えっ?そんなルールあったっけ(笑)」



未来の無邪気な笑顔を見てると


私の心は更に悲しくなっていく。


このノートの示す事が何なのか……


そんな事も私はわからないまま


恐怖心だけが取り残されて


明日,学校へ行くのさえ嫌になってるのに。


未来は……



未来「胡桃?何かあった?」


胡桃「あのさ,今日はちょっと疲れたから…一人にしてほしい。」


未来「そ,そっか。ごめんね。じゃあまた明日見せるね。」



何も気づかないまま


未来は自分の部屋へと戻っていく。


扉が静かに閉まった時


一瞬


この世界の表と裏が見えた気がしたんだ。



胡桃「………。」



なんか


未来が『表』で


私が『裏』みたいだよ。





その後


私はあのクラスの謎が深まる中


小さなノートを開く事なく夜を過ごし


現実から目を反らす様にして


ゆっくりと眠りについた。





このきっかけが



今後の私の運命を



左右する事も知らずに。


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