6×6BLOCK【裏】


□【裏2】 (1/1)







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村上「………。」



岩垣さんの様に標的がいれば


このクラスにイジメなんて無くなる。


一人の犠牲で他のクラスメート全員が


その恐怖に震える事なく学校生活を送れる。


私の理想だったクラスが


やっと


やっと


この2ーAに。


こんなに嬉しい事はないよ。





[from.天の目]



[12番への行動を許可します。あなたの考えた作戦はきっと正しい。きっとこのクラスに『壊れない正義』を齎すはずです。それに…これで終わりにするのは勿体ないですからね。理想郷を目指す気持ちは同じ。だから,確実に実行して下さい。]





やっぱり『天の目』はわかってくれてる。


私のこの気持ちを。




あの時からずっと……





…………………………………………………





誰もいない放課後の教室。


その教室で私は一人だけ残って黒板を綺麗に掃除していた。



村上「はぁ…なんでサボったりするのかな。」



黒板消しから落ちる白い粉。


それを雑巾で拭き取りながら


自分の今ある存在を悲しんでいた。


中学から学級委員をしてきた私は,学校を綺麗な世界に変えようと必死だった。


今まで見てきた酷い現実世界を


自分のこの手で変えられると信じて。



でも……


今も変わらず


ただのクラスの飾りとして存在してる私。


それがどうしても歯痒かった。


許せなかった。





「村上さんって……偉いね。」





オレンジ色の夕日が窓から差し込む中


私の背後から声が聞こえてきたんだ。


その声を聞いた私は,少し戸惑いながらもゆっくりと振り返っていく。



村上「あっ……一人かと思って。まだ帰ってなかったんですね。」



そこには一人のクラスメートが


椅子に座って私を見ていた。



「ごめんなさい。突然声をかけてしまって。邪魔をするつもりはなかったんだけど……忘れ物したから。そうだ,せっかくだから手伝おっかな。」


村上「大丈夫です。私……こういうの意外と好きなんで(笑)」


「そうなんだね。やっぱり村上さんって偉いよ(笑)」


村上「そんな事は……。」



なんでここに……


あまり話した事もないのに。


それにこんなにたくさん話すタイプの人だとは思わなかったけど。


そんな事を思いながら背中を向けて黒板の掃除をまた始める私。


早く帰ってほしい気持ちとは裏腹に


また私に声をかけてくる。



「村上さん…ちょっと質問していい?」


村上「し,質問……?」


「そう。あのね,クラスが始まって間もないけど……白波くんがしてる事をどう思う?」



白波くん!?


まさか清水くんをイジメている事を言ってる?


私が学級委員だから責める気とか。


きっとそうかもしれない。


でも,ちゃんと答えないと。



村上「白波くんですか……。私は詳しく知らないですけど,イジメは良くないと思います。皆,2年生になって少し浮かれているのかもしれないですね(笑)」



私,ごまかしてる。


急な質問に動揺して冷静さを失っているんだ。


まさか私がこんな事を言って話を反らすなんて……


やっぱり学級委員なんてこんなもの。



「そっか…。私もそう思うから大丈夫だよ。別に村上さんを責めてる訳じゃないから。たださ……イジメはどうやったら無くなるのかなって思って。私も一年の時にイジメを受けてて,凄く辛い経験をしたから。」



イジメ……


それは私の見てきた残酷な景色。


それを無くす為にはどうしたらいいのか…


学級委員として必死に今まで考えてきた。



でも


結局自分が弱すぎて


力が足りなくて


何も出来なかった現実。


だから私の存在意義も見失っているのかもしれない。



村上「きっと……無くならないです。イジメなんて。」



私の口から弱音が簡単に出ていく。





「どうかな…。それは違うと思う。」





村上「違う?」



手にしていた雑巾がピタリと止まる。


それは何かに吸い寄せられる様に。



「村上さんならわかるはずだよ。正義感が強い村上さんなら。」


「わ……私が?」



何を言ってるの?



「きっと簡単な考えじゃ『イジメ』は無くならない。だから完全なシステムを作ってクラスを一つにして無くすの。」



馬鹿げてる。


そんな理想的な事が出来る訳がない。



村上「そんなの無理です。絶対に無理です。人が人である以上は…絶対に。」



おかしな事ばかり言って


何がしたいの?


私をからかってる?





「村上さん…それが出来るとしたらどうする?学級委員として。」





で,出来る!?


学級委員として?





「世界の大人たちがしてる戦争と同じだよ。それがヒントかな。」





ヒント……





村上「………。」



私は何故か


両手が震えていたんだ。


これから私に話される言葉がどんな事かを予知するみたいに激しく心も震えていた。





「村上さんはきっとこのクラスを一つにできるよ。これから話す事を実行すれば……」





私が



クラスを一つに……





…………………………………………………





あの時は信じられなかったけど


このシステムは本物だった。



清水くんへのイジメも無くなり


クラスメートたちは自分への評価が抑止力となって正しい道へと進む。


イジメの連鎖も防げている。



だから……


これは絶対に続けるべきなんだ。


『天の目』が一度は止めようと迷ったこのシステム。


それを学級委員の私がサポートする。


これ以上


完璧なものはないはずだから。





だから…



私は実行する。





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