紅色メランコリー
[003](1/7)
最終電車と涙雨



外は雨。
風力はゼロ。
ピンク色の大きめの傘を広げる彼女と、少し俯いている僕。


「入る?」

「おう」


遠慮がちに入り、傘の柄をさり気なく持って歩き出す。
なんとなく、本当になんとなくなのだけれど、もう会えないような気がした。


「大分降ってきちゃったねー。当分やまないんだろうなあ」


ね、というようにこっちを向いてくれるのに、僕は何も言えなくて。
ただ降り続いている雨を眺めていた。

諦めたように彼女は小さく溜息を吐き、視線を前に戻す。
肩が少し震えている様に見えるのは、気の所為なんかではなくて。
きっと僕と同じことを考えているんだろうな、と勝手に想像した。

そして、図星となるような一言が降る。


「…ねぇ、ゆきくん」

「ん?」

「わたし達…もう終わりかな?」


そう言った彼女の瞳は哀しげで、でもとても澄んでいた。




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