小川くんの場合
[引っ越し](1/30)
翌日。
車を出してもらって俺のアパートに行く。
そういえばと会うときはいつも賢一さんの家で俺の家は入ってもらったことはない。

「初めて直紀くん家に入るなぁ。」

なんて言われて

「何も面白いもんもないけど。賢一さんの部屋見たく綺麗でもないし。」

と言いつつ部屋に通す。
明らかに賢一さんの部屋と比べて雑然とした部屋。
決してゴミ屋敷というわけではない。
ゴミはちゃんと分別して捨ててあるしちょっと雑誌とかが部屋の端に積んであったりするくらいで。
賢一さんの部屋より生活感がだだ漏れなんだよなー。

「なんか、いいね。」

と言われて何かと思った。

「何が?」

「うーん……いや、引かないでね?」

うん?」

「ここで、直紀くんが寝起きして生活してる、って思うとなんか。」

はははっ
つい笑ってしまった。

「笑わないでよ。」

なんて照れたように言われて顔に手を伸ばす。

「いや?可愛いな、と思ってさ。」

と言うと頬をすりっと寄せてきた。
猫みたい。
可愛いんだけど。
荷造りの前に。
両手を頬に添えてチュっとキスをした。
あー、昨日あんなにしたのに。
この部屋に賢一さんがいるの初めてなんだよなー
ちょっと萌えるシチュエーションだ。
なんて思ってしまって。
賢一さんをその気にさせたくてキスを深くする。
歯列をなぞって舌を舌で掬い上げて。
チュルッと吸いついて。
賢一さんも積極的にキスに応えてくれている。
このまま
どうしてもそんなことを考えてしまう。
舌を吸うようにしてチュっと離れると目元を紅くした賢一さんの顔が写る。

「ちょ……ごめん。もうダメ。」

とベッドまで連れて行って組み敷く。

「ダメ?」

と聞くと驚いた顔をしている。

「ぁ……き、昨日もあんなにしたのに……?」

……この部屋に賢一さんがいるのなんかいいな、と。……このベッドではしたことないから、……ね?」

と誘うように頬に手を滑らせる。

「だめじゃ、ない……。」

それでもそう言ってくれる賢一さんに萌える。

「好き。」

と言って首筋に顔を埋めて行く。


- 62 -

前n[*][#]次n
/146 n

⇒しおり挿入


[編集]

[←戻る]