ちょっとどいてね(8/8)
「あのう…」
先に口を開いたのは、
めいだった。
俺は首をかしげた。
「あとで、
ミキ先輩の教室まで
行ってもいいですか?」
「……」
今度は俺が
口をあんぐり開けることになった。
あとで?
あとでっていつ?
なにしにくるの?
なんて思っていると、
俺の肩が急にズシリと重くなった。
「もちろんじゃないか」
そして、俺の後ろから
勝手にそんなことを言った。
────トトが。
俺が「おい、おまえなに勝手に…」と、
やつに言って、また下を見ると、
「え、どなた?」みたいな顔して
めいは困惑気味だった。
「驚かせてしまってごめんよ。
なあ、めいちゃん、
あとでっていつくるの?」
そして、突然やってきた彼は
おかまいなしに話を続ける。
めいは「まあいいか」みたいな
表情になったあと、
ほんのりと微笑みを浮かべて
それから口を開いた。
「────放課後に」
俺と、トトは、
まったく同じタイミングで
「わかった」と叫んだ。