嬉しいねえ(6/6)
「──いや、なんでもないよ。
さよなら、星野。
また会おう、学校のどこかで」
「はい…、
ご、ご近所だから、この辺りでも」
「そうだね」
「今日、」
「え?」
「私は…明日から
学校に行く楽しみがひとつ
増えました」
「……ふん」
と、俺は軽く笑った。
「俺のことだろ?
嬉しいねえ」
右目の上の傷は
まだ痛かった。
でも俺は自分が
星野に笑いかけたとき
そして星野も同じように
笑ってくれたとき
脚立から落ちるのも
悪くないなと思った。
「俺も、明日が楽しみだよ。
こんな気持ちになったのは
すごく久しぶりのことだ…」
俺はそう言い残して、
星野の家から立ち去った。