ラベンダーガール  嬉しいねえ(1/6)










駅に着いて、電車に乗る頃には
星野はよっぽど
晴れ晴れとした表情になっていた。

伏せ目がちだった瞳は
ぱちりと大きく瞬かれ、

俺の顔をのぞきこむのを
どこか楽しんでいるようにも見える。


「態度、変わりすぎだろ」


と、俺は心の中だけで
とどめておこうと思ったことを
思わず口にした。

「だって…」

動きはじめた列車が
カタンカタンと揺れる。

星野が危なげに
手元をさまよわせているので
俺はドア近くの手すりを掴むように
彼女の腕を軽くひっぱった。


「はあ、ありがとうございます」


────なんてまあ、
可愛い顔で
微笑んでくれるんだ、きみは。

感動を通り越して気後れ気味。

なんていったって星野は
すっかり俺に
気をゆるしてしまったようだ。


まあその気持ちは
分からなくない、か。


彼女はほんのさっきまで、
でっちあげのストーカー被害で
愛する先生をついつい困らせ、

そのあげく見ず知らずの男子生徒
(昼休みから3時間気絶していた)に
自宅まで送ってもらうことになっちゃった、
とかいう展開に見舞われていたのだから。

(これ、星野が全部悪いと思うが。)






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