パーティールームに戻った四人は、待機組を仕切っていた九条、山村と互いに情報交換をした。
皆沈んだ表情をしている。
無理もない…昨日まで人一倍笑顔で、馬鹿みたいに騒いでいた愛美がいないのだ。
容子はもちろん美夢も泣いている。
順平にも椿にも、涙の跡がある…。
皆、悲しく…そして恐ろしいのだ…。
頭の中はまだ混乱しているだろうが…本能的に理解している…この島に『殺人犯』が居ると…。
九条が言った。
「そうか…やはり他殺か…でも拳銃って…」
葵が言った。
「可能性はいくつもありますが…山村船長、船に乗っていたのは僕たちが12人で間違いありませんね?」
山村が答えた。
「はい、間違いありません…私達以外の人間が船に乗り込んだらセンサーで反応するようになっています…」
「なるほど…まぁ仮にセンサーが故障して、誰が乗り込んで…一緒にこの島に来たとしても、誰にも気付かれずに2〜3日も、潜伏するのは…この狭い敷地では不可能ですね…」
有紀が言った。
「だとすると…我々の寝静まった夜にこの島にやって来たと?」
葵は言った。
「可能性は無くはないです…」
歩は言った。
「しばらくは…団体行動だな…」
するといつもは大人しい順平が声を荒げた。
「冗談じゃないっ!この中に犯人が…いるかもしれないんすよっ!」
九条があわせて言った。
「順平君…少し落ち着いて…」
順平は引かない。
「落ち着け?よく言えますね?俺はこの旅に一人で参加しました…あんた達と違って…」
葵は順平に言った。
「順平君…少し落ち着いて…。では?君はどうしたいんですか?」
順平は葵を睨み付けて言った。
「自分の身は自分で守りますっ!」
葵は言った。
「籠城でもするつもりですか?」
「ええ…幸い食料は腐るほどありますし…必要な物は隙を見て転送倉庫に取りに行けばいい…」
葵は順平に言った。
「今ここで勝手な行動を取れば…君は容疑者ですよ」
順平はバカバカしいと、いった表情で葵に言った。
「じゃあ俺が犯人だと言う証拠をだしてよっ!」
葵はあっさり言った。
「証拠はありません…」
「そりゃそうだよっ!俺に拳銃を持ち込めるわけがないっ!」
そう言うと順平は食糧庫に行き、保存食をかき集めた。
自分の部屋に戻ろうとする順平を、九条は抑えようとしたが、それを振りほどき…順平は部屋へ戻ってしまった。
有紀はパーティールームの入口で、順平が部屋に入ったのを確認して言った。
「順平は、部屋に無事に戻った…」
九条が言った。
「やれやれ…まぁ、彼が疑心暗鬼になるのも無理はない…」
歩が九条に言った。
「言ってる場合かよっ!今こそまとまるべきだろっ!」
今まで黙っていた光一が言った。
「確かに団体行動は必要だが、無理がある…」
九条が言った。
「どういう事です?堂島さん?」
光一はゆっくり言った。
「別に反対している訳ではないが…四六時中は無理だ…寝る時は?風呂は?トイレは?」
葵がいつもの髪をクルクル回す仕草で、言った。
「堂島先生の言う事も一理あります…」