裏のこぴぺ。

●[復職](1/3)
沙耶ちゃんシリーズ

723 名前:まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/10(日) 23:45:16 ID:Nc5xjCme0
『霊障』から一週間ほどして、先輩から催促の電話があった。
『顔出せっつっただろうが』
・・・忘れてた。
あんまり登場させたくないので、仮名だけつけておく。
H先輩は俺の5つ年上で、上司としてわがまま放題を俺に押しつけた人だった。
その頃、俺は社会の右も左もわからないガキだったから、事なかれ主義でH先輩に嫌々くっついてたんだが、
同じ社にいた彼の反抗分子からも目をつけられて、結局退職するに到ったんだよ。

数年ぶりのボロい社屋を訪ねると、在社当時よりももっとメタボに傾いたH先輩が、重そうな腰を上げた。
俺は頭は下げたが、非好意的な表情をしていたと思う。
勧められた椅子を使うまでもなく、俺たちの交渉は決裂する。
「社に戻れ」
「戻りません」
アクの強すぎる人だから、部下がいつかないんだろうなと、すぐにわかったからさ。
「働いてんの?」
「いま、職を探してる最中です」
「じゃあいいじゃねーか」
「よかないですよ。ここ以外で探します」
「嫌われたもんだなあ。電話までしてきておきながら」
あんたにしたんじゃねーよと、心の中で毒づきながら、俺は黙ってた。
実際、ここに連絡を取った本当の目的は、復職への足がかりにしたかったからなんだ。
H先輩が健在と知ったら、その気はなくなったけどね。

「まあなんだ。正社員になるかどうかはともかく、外注としてこの仕事請けない?」
俺が固辞してたもんだから、先輩が折れてきた。
外注って発想はなかったなあ。
「どんな仕事ですか?俺、ブランク長いですよ」
「だから簡単なやつね。U町って知ってるかな?」
妙に丁寧な説明なのが気味悪かったが、俺は話を聞くことにした。
「知ってます。ぎりぎりで市内に入ってる僻地ですね」
俺の住んでいる市は、県内で一番の面積を誇っている。
でも、中心の駅のまわり以外は、ほとんどが田園か山林に組していた。
U町なんてのは、ちょっと前まで郡だったところだ。
「そうそう。突風被害に遭ったとこだ。
 その被災地が手つかずの状態で残されてるらしいから、ちょちょっと行って写真を撮ってきてくれ」





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