裏のこぴぺ。

●[霊障](1/8)
沙耶ちゃんシリーズ

652 名前:まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/07(木) 23:43:55 ID:8xFSOoXu0
初めに断っておきます。俺の書く話は、筋は実話だけど設定はデフォルメしてある。
特にこの章はかなり狂わせてあるんで、似通った現場があったとしても別物。
だから、近場の人は気にせんでください。

沙耶ちゃんの大学生活もあと1年を切った初夏のことだ。
ゴボウのようにどす黒い顔とやせ細った親父の面倒を看ていたとき、彼女から電話があった。
『火傷ってすごく痛いんですね』
はあ???
他愛のない話だった。
今朝、独り暮らしの沙耶ちゃんが朝飯を作ろうとしたときに、蒸気で指を痛めたらしい。
むしろ『火傷って初めてしました』って彼女の言葉のほうが、俺にはビックリだったよw
火傷の痛みがわかったので、供養に行きたいところがある。車を出してほしい。彼女はそう言った。
付き合いが長いんで、意味はすぐにわかる。火傷が元で死んだ誰かの、残留したエネルギーを慰めたいんだな。
親父の所にいることを告げると、『わかってます』と言われた。
そして、『私もそのうちに、ご挨拶に伺っていいですか?』と付け足してくる。
二つ返事したのは言うまでもない。

親父の病室に戻ると、「お前もそういう歳になったか」と笑われた。
「孫の顔までは待ってられんが、結婚式ぐらいなら行ってやるぞ」とも。
一瞬、沙耶ちゃんが生霊でも飛ばして、挨拶に来たのかと思ったよ。
ま、電話の相手が女だと悟った親父の、冗談だったと今では思ってるけどね。


653 名前:まこと ◆T4X5erZs1g:2008/08/07(木) 23:46:08 ID:8xFSOoXu0
自宅アパートに戻った翌日、休日だったこともあって、さっそく沙耶ちゃんを乗せて早朝に出発した。
今回の目的地は、片道4時間はかかる山中のトンネル。
途中でメシ食ったり観光したりと、ちょっとしたデート気分を味わえたww

沙耶ちゃんがそのトンネルを知ったのは、中学生のときらしい。
親父さんが主幹線と間違えて入った旧道の途中に、ぽっかりと孤独に口を開けていたそうだ。
「まだトンネルが見える前から、高い叫び声がずっと聞こえてたの・・・
 『いいいいいいいいいいい』って感じで、すごく険のある声」
沙耶ちゃんの透明感のある高音で真似されてもピンと来なかったが。
「見たくなくて、トンネルの中はうつむいてたんだけど、声だけは聞こえるでしょ・・・あのね・・・」
そこで言葉を切って、「あ、ごめんね。今から行くとこなのに、こんな話したら気味悪いよね?」と俺に確認。
「何をいまさら」と笑って返した。
安心したように彼女は続ける。
「トンネルの中には、男の人がいたみたい。んと・・・たぶん、まことさんよりも若い人。
 その人がトンネル中を走り回りながら、『熱い熱いっ』って叫んでるの・・・怖かったあ」
そんな場所に、なぜ自分から行くかなあ。
沙耶ちゃんに『浄霊行脚』の供を頼まれるようになってから、ずっと持っていた疑問は、最近解けつつある。
彼女は『正しく使う』ことで、自分の能力を肯定したいんだ。きっと。

予備知識を避けるために沙耶ちゃんには言わなかったが、そのトンネルでは確かに焼身遺体が見つかっていた。
若年者同士の抗争で負けたグループの1人が、灯油をかけられて火達磨になってる。
換算すると、事件は沙耶ちゃんがトンネルを通った2、3年前ということになる。
霊も新しい(?)ほうが活性化しているっていうのが、俺の思い込み。
だから今回、10年以上経った古い霊体への対面は、期待ハズレかもしれないな。






- 11 -

前n[*][#]次n

⇒しおり挿入
/395 n




[編集]