浮気な彼。移り気な彼女。
case1[涙と、ワガママ。(前編)](1/27)
孝文が浮気してると最初に気付いたのは、いつだっただろう。
もう、忘れてしまった。
私が感づいた中では、彼の浮気はこれで2度目だと思うし、そう信じたい。
4つ年上の、27歳の彼。
出逢ったのは、私が大学3年生──21歳の時で、友達の紹介だった。
趣味の映画のことで意気投合し、孝文の方がすぐに告白してくれた。
それから3年。
私は、彼のことを知る度に好きになり、出逢った頃の情熱的なドキドキこそないにしろ、この穏やかで愛しい気持ちを大事にしていた。
でも、それはある日突然起こった。
「孝文君を……見た」
私と孝文を引き合わせてくれた親友の有紗は、小さな声でそう言った。
有紗と彼は、幼なじみだ。
どこで見たの?
なんて聞かなかった。
その有紗の声の低さから、答えはすぐに分かったから。
「……うん。ありがとう有紗」
「うんって……いいの!? つぐみのこと、裏切ったんだよ!?」
「……もう、知ってるから」
「……え」
嘘。
本当は、実際耳にしたのはこれが初めて。
それに、今回の浮気は、もちろん1度目のものとは別物なのだ。
衝撃を受けない訳がなかった。
でも、そんな衝撃に耐えた自分がいた。
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