それでもキミが。
10[藤堂君。](1/18)






放課後。



もちろん私達実行委員には、委員会が待っていた。





「ということで。明日は忙しくなると思うけど、よろしくお願いします」





蒼君がファイルをパタンと閉じながら言うと、実行委員の皆は「はーい」と返事をした。



蒼君の隣にいる秋山先輩は、机に置かれたプリントに目をやってるだけだ。



今日、蒼君と秋山先輩は、一回も目を合わせていなければ、言葉も交わしていない。





「じゃあ、さっき割り振った通りの仕事をしたら、各自解散でいいです」





更にそう付け加えた蒼君に、皆がまた返事。



ガタガタッと音を立てながら皆が立ち上がる中、蒼君は髪の毛をかき上げながら、ふと気付いたように私の方に目をやった。



そして、心の底までとろけさせてしまう程の微笑み。



私も立ち上がりながら、ぎこちなく、その微笑みに微笑みを返す。





「仲直りしたのか」





隣にいた藤堂君が、低い声でそう聞いてきた。





「仲直りも何も……喧嘩してた訳じゃないもん」





彼を見ないまま、机に置かれたプリントに目をやりながら答える。





「ふーん」


「……藤堂君……あの」


「なに?」


「色々……ありがとう」


「なにが」


「心配……してくれて」


「別にー。何もしてねぇ」


「……もう……大丈夫だから」


「あ?」


「もう、心配してくれなくて、いいから」





顔を上げ、しっかりと彼の顔を見て、思わず息を飲んだ。



──あれ?



藤堂君……って……



こんなに優しい顔してたっけ?



そう思ったから。





「なに? もう関わんなっつってんの?」





藤堂君はそう言って、唇に薄く笑みを貼り付けた。



何故か、胸がチクリと痛んだ。




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