それでもキミが。
7[真実は残酷です。](1/12)
次の日。
案の定、私は風邪をぶり返した。
熱が出たのだ。
「羽月、具合どう?」
ドアがコンコンと音を立て、その後そんな声が飛んできた。
「うん、大丈夫」
「入るよ」
「うん」
小さな音を立てて開いたドアから、お母さんが顔を覗かせた。
その手には、お盆。
コップとポット、それにマグカップも乗っている。
それを小さなテーブルに置き、マグカップだけを手にするお母さん。
「温かいレモネード。飲みなさい」
そう言って、赤いハート型のマグカップを私に渡す。
私は身体を起こし、「ありがとう」と言って、それを受け取った。
少し口をつけて喉に流すと、いつものレモネードより少し甘く感じた。
お母さんがハチミツを入れてくれたんだろうと思う。
「ねぇ羽月、これ蒼ちゃんのじゃなかったっけ?」
「え?」
「リビングのテーブルの上にあったんだけど」
「……あ」
お母さんが手に持っていたのは、確かに私が蒼君にプレゼントしたリストバンドだった。
真っ青な。
「忘れてたぁ……。ちょっとほつれてる所があってさ。直しとくって言って、預かってたの」
「そう……。お母さんが直しとこうか?」
「ううん! 私が直したいから」
「そう」
ニコリと笑ったお母さんは、一旦部屋から出ていき、また戻ってきた。
その手には、裁縫箱。
私に「はい」と渡す。
「ありがと」
笑ってそう言うと、お母さんは私からマグカップを受け取り、それをテーブルに置いた。
針と青い糸を取り出し、小さな針穴に糸を通す。
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