それでもキミが。
4[やっぱり好きなんです。](1/20)
保健室の真っ白なドアには、“只今外出中”と札が掛けてあった。
もちろん、鍵が掛かっている。
蒼君は「待ってろ」と言って、職員室にいる先生から、保健室の鍵を借りてきてくれた。
蒼君はスポーツ部だったということもあり、保健室の勝手はよく知ってるのだ。
中に入ると、窓も閉め切っているせいか、すごく暑い。
「あちぃな……」
そう言った蒼君は、髪の毛をグッとかき上げながら、窓を開けた。
キュッキュッ、という、スリッパが床と擦れる音がやけに響く。
真っ白な空間。
消毒液の匂い……?
保健室独特の、清潔な匂いが鼻をくすぐる。
「今湿布出すから、ベッドに座ってろ」
「椅子じゃなくて?」
「ベッドに座った方が、足が浮いてやりやすいから」
「……分かった」
言われた通りにベッドに腰掛け、靴下を脱いだ。
もちろんまだ腫れてなんてないけど、痛い。
「他に傷あるか」
蒼君が棚を開けながら、そう聞いてくる。
そう言われると、何故かどこそこ痛くなるから不思議だ。
ふと下に目を向けると、肘の頭がすりむけて、血が滲んでいた。
足の膝小僧にも、擦り傷が目立つ。
「どこそこケガしてんな」
いつの間にか、湿布を手にした蒼君が、私の前にひざまずくように座っていた。
ペリッと湿布のシールを剥がす。
「挫いた方の足、ちょっと上げて」
「や、やっぱり恥ずかしいから、自分でっ……」
「何言ってんの」
「だって……あ、足をそんな近くで好きな人に見られるだなんて……」
「………」
蒼君は、下に向けていた顔を上げ、私を見つめてくる。
その顔はポカンとしたように無表情だったけど、私と目が合うなり、変わった。
目が少し細められ、口元が緩む。
彼は、その表情を見せまいとしてか、また床に目を戻しながら言った。
「今更。羽月の足なんて、ホクロの位置も分かるくらいなのに」
胸が、キュンとなった。
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