それでもキミが。
[やっぱり好きなんです。](1/20)






保健室の真っ白なドアには、“只今外出中”と札が掛けてあった。



もちろん、鍵が掛かっている。



蒼君は「待ってろ」と言って、職員室にいる先生から、保健室の鍵を借りてきてくれた。



蒼君はスポーツ部だったということもあり、保健室の勝手はよく知ってるのだ。



中に入ると、窓も閉め切っているせいか、すごく暑い。





「あちぃな……」





そう言った蒼君は、髪の毛をグッとかき上げながら、窓を開けた。



キュッキュッ、という、スリッパが床と擦れる音がやけに響く。



真っ白な空間。



消毒液の匂い……?



保健室独特の、清潔な匂いが鼻をくすぐる。





「今湿布出すから、ベッドに座ってろ」


「椅子じゃなくて?」


「ベッドに座った方が、足が浮いてやりやすいから」


「……分かった」






言われた通りにベッドに腰掛け、靴下を脱いだ。



もちろんまだ腫れてなんてないけど、痛い。





「他に傷あるか」





蒼君が棚を開けながら、そう聞いてくる。



そう言われると、何故かどこそこ痛くなるから不思議だ。



ふと下に目を向けると、肘の頭がすりむけて、血が滲んでいた。



足の膝小僧にも、擦り傷が目立つ。





「どこそこケガしてんな」





いつの間にか、湿布を手にした蒼君が、私の前にひざまずくように座っていた。



ペリッと湿布のシールを剥がす。





「挫いた方の足、ちょっと上げて」


「や、やっぱり恥ずかしいから、自分でっ……」


「何言ってんの」


「だって……あ、足をそんな近くで好きな人に見られるだなんて……」


「………」





蒼君は、下に向けていた顔を上げ、私を見つめてくる。



その顔はポカンとしたように無表情だったけど、私と目が合うなり、変わった。



目が少し細められ、口元が緩む。



彼は、その表情を見せまいとしてか、また床に目を戻しながら言った。





「今更。羽月の足なんて、ホクロの位置も分かるくらいなのに」





胸が、キュンとなった。




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