ランネ・ラングイ
[第18話 悪夢](1/5)


 はあ、はあ、息が苦しい。足が痛い。寒い。

 シドナはまだ歩き続けていた。途方もなく、先に見える境界線を目指して。しかし景色は一向に変わらない。冷たい風が吹き荒れ、質素な土埃が足元で踊っている。

 白い息がそのまま凍ってしまうのではないか、と思うほどの恐怖感に圧迫される。心細さに身を縮めていた時、背後から異様な程冷たい気を感じた。咄嗟に振り返るとそこには、シドナがいつか夢で見た女の子と同じ白いワンピースを着た幼女が立っていた。

 ──あなたは……

 シドナは恐る恐る口を聞いたが、幼女はほんの少し口の端を上げるだけで何も言わなかった。不気味だった。シドナは彼女と目線を合わせるように蹲み込んで、もう一度質問をした。

 ──あなたは、ここがどこだか分かる?

 ──分かるよ

 子どもらしい無邪気さの残る声だった。単調な返答にシドナは呆気にとられたが、続けて問いただした。

 ──じゃあ、ここはどこなの? ずっと私のことを呼んでいたのもあなた?

 シドナが焦ったように聞くと彼女は、にっこりと笑い両手を後ろで組んだ。肩まである白髪を揺らしながら辺りを見回した後、シドナの目を見て言った。

 ──ここは、私の中よ

 それはまるで当たり前だ、というような口調で、シドナは一瞬言葉を失った。もう一つの質問には答えてくれなかった。


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