恋執事
STORY:[01](2/17)







──ピピピッピピピッ



『…ん、…』






─ピピピッピピ、



『…』

「お嬢様」

『…』

「徠夢(ラユ)お嬢様」

『…』

「………。」

『…うぎゃっ!!』

「おはようございます(ニコッ」

『おっ、おはようございます。ニコッ☆…じゃないし…!』

「失礼、お嬢様がいつまでもぐうたらとしていて目覚まし時計があまりにも煩かったものなので。目覚ましをかけるぐらいならちゃんと起きて下さいね。…さぁ、朝食の準備が出来ておりますよ」

『…よく噛まずに言えたね』




あたしがそういうと、ニッコリと笑みを浮かべる───綺ノ女(あやのめ)家の執事。




なかなか腹黒いというか、うん。S。しかも“ド”がつく程のね。




あたしが二度寝をかましていると布団を剥ぎ取られ、顔面に水をかけられた。



…どーよ、こんな執事。



おまけに、「いかなる時も女性ならもっと可愛らしい声を出しなさい」なんてニッコリと笑顔でいわれる始末。




とりあえず水かけるって。まじっすか。








あたしはこの家の当主でもなければ血も繋がっていない。母が再婚をした相手が、この家の当主で、義理の父。



こんな金持ちの家に転がり込んで何もかも身の回りをして貰って、おまけにお金も出してもらうなんて、なんか悪い気がする…ってことで、洗濯物や料理を手伝ったりしてる。


…大概サボッてるけど(笑)



まあ当たり前に手伝わなくていいっていわれる訳だけど。




バイトもしていて、せめて自分が欲しい物ぐらいは買えるようにしてる。




だから“お嬢様”なんて言葉はあたしには似合わないし、あたしなんかに使う言葉じゃないんだけど。






『ねー、飛鳥(アスカ)』

「はい?」

『…ふふふー』

「…なんですか。その身震いが起こってしまうような皮肉な笑い方は」

『………だいすきっ!』





『、…………。』

「遊んでいる暇あるならさっさと朝食をとって下さいね。」


──バタン




飛鳥の背の高い体に勢い良く飛び付こうとしたら、顔面を手の平で押さえ付けられた。勢い良く飛び付いたもんだからベチン!と音がして止まる。


そんなあたしを尻目に、呆れたようにはぁ、と小さなため息をつき言葉を落として飛鳥は部屋を出て行った。






『いてて…。あーあ。つれないな〜』




ブッスーと顔をしかめ閉じたドアに向かってベー!としてやった。






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