§6[再び、夏祭り](1/5)
「おぅ嬢ちゃん! 焼きリンゴはいらんかい!?」
「お兄ちゃんよ!! 焼きそば買わんか!!?」
あちらこちらから威勢の良い出店の掛け声。
ちょっと店を覗こうにも、人波の力に、川を下る紅葉の気持ちが解ったりする。
「おっちゃん! メロンとイチゴとブルーハワイちょーだい! 3つずつね!!」
普段から人混みは避けて通る“2人”は、何も食していない今からげっそりとしていた。
ガヤガヤと騒々しいこの場でも、平均値を超越した彼女のハイテンションの声はよく響いていた。
「……ちょっと待てやゴラッ!! 誰が3つも食うか馬鹿野郎っ!」
その片割れが、はっきりと聞こえた万雪の注文に、思わず声を張り上げる。
が、そんな努力も虚しく、出店のおっちゃんと万雪には届いていないらしい。
「9つも持てるかい?」
「大丈夫! 連れがいるんで!」
意気揚々とした2人に、もう1人が苦笑いを浮かべて相方の肩を叩いた。
「まぁ、行かなきゃなんねーよな? おまえが行くって言ったんだしさ」
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