氷姫

§5[誕生日とバレンタインデー](1/12)



この日の朝──



「ほれ、これやるよ」


「遠慮しないで貰って」



万雪の記憶では、遥か昔の修学旅行で世話になった2人から、可愛らしいラッピングの施されたモノを貰った。


「え、あ、ありがとう」


訳がわからないながらも、それを受け取る。


「開けてみて」


港に催促されて、開けてみれば、


「時計?………ん?方位磁石?」


腕時計と思ったそれは、片方が赤い針が1つしかない。さらに、文字盤の代わりに“N”と“S”が対極に書かれていた。



「ハッピーバースデー♪」



港に言われて、これが何だったのかがようやく解った。



誕生日プレゼントに、方位磁石…



いまいち繋がりが解らず首を傾げる万雪に、知道が一言、


「方向音痴が少しでもマシになるようにってな。御守りくらいにはなるだろ」


「いや、今時と言わず、道歩くのに磁石じゃ意味ないでしょ」


『第一、私は方向音痴じゃないし』と顔に書いてあるのを見た知道が、鼻で笑った。


「雪山で遭難しかけて、良く言えるな」


「あれは方向音痴云々関係ないでしょうが」



…2人に協調性がないのは今に始まったことではないので、港は見て見ぬフリをする。



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