§4[修学旅行](1/22)
「ひゃっほー!! 来たぜ、きちまったぜ!」
叫びたい衝動を解禁して、万雪は白い斜面に向かって雄叫びをあげた。
周りには丸高の同学年がうじゃうじゃいるが、誰も万雪に気を留めない。
そもそも、この絶叫女を、陰の冷淡な万雪と繋げられないのだ。
周りの目を気にするわけではないが、バスという狭い場所から解放され、こうして万雪も思う存分野生化しているのだ。
「よし、滑るか!」
ゴーグルを装着すると、いつもより重い、特別な足を引き摺ってリフトに向かう。
言うまでもなく、万雪の足取りは恐ろしく軽やかだった。
1月下旬。
万雪たち2年の修学旅行先は、雪国だった。
予算上、日本国内の内陸部であるが、雪国であることには違いない。
天然の雪はクリスマス以来、雪原に至っては生まれて初めての万雪の瞳には、雪の結晶のような煌めきが宿る。
「いやぁー…やっぱスキーやらないと冬じゃないな」
リフトに乗って、一人そんなことを呟いたのだが、既にスキーもスノボもスケートも、冬休み中に常識的には飽きるほどやっていた。
なのに、この群を抜くテンションの高さは、万雪以外の生物では考えられないだろう。
さすが氷姫と呼ぶべきか、万雪は冬を誰よりも満喫していた。
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