氷姫

§3[ホワイトクリスマス](1/8)



12月24日。


ここ何十年も遭遇出来なかったものが、万雪たちの街にやって来た。



「わぁーぉ…雪! 雪降ってるー!! 積もってる!!」


クリスマスイブ、街は白銀の世界になっていた。


世間の言う、「ホワイトクリスマス」だ。


陽の部分全開の万雪は、かつて無いほどのはしゃぎようで、


「お母さん! ショッピング行こ!!」


と、母親に言い寄った。


普段なら、ショッピングに目がない母親なのだが…



「行かない。小遣いあげるから、照葉ちゃんや美都ちゃん誘って行ってこい」



福沢諭吉が刷られた紙幣を2枚も渡され、万雪は目を丸くした。


易々とそんな大金を寄越す母親を見て、万雪は悟った。


「…解った!! 有り難く頂戴するね」


すぐさま財布にそれを仕舞い込み、コートを着、マフラーと手袋とニット帽も装着して、ショルダーバッグを掴んで家を出た。



「全くせっかくの雪だってのに、ノリ悪いよなあ…」


万雪以外の早島一家は、超のつく寒がりだった。


だから、家で雪を待ち望んでいるのも、冬にアイスを好んで食すのも、万雪だけ。



何となく、空を見上げた。


お世辞にも綺麗とは言えない降り方だが、立派な雪だった。



「神様ありがとーっ!!」



思わず、偶像の神に礼を言ってしまうほどに、珍しいクリスマスイブだった。




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