曜(1/20)
5時を知らせるサイレンと共に、どこか哀愁漂う音楽が町中に鳴り響く。
陽が落ちるのが遅くなってきて
まだまだ外は明るいけれど、
みんな一斉に散り散りになった。
少し小走りで家路を急ぐ。
最近小さくなってきた靴のつま先がギュ、っと痛んだ。
夕方特有の生温い風がシャツの背中を撫ぜて、汗で張り付いた前髪をそっと掻き上げる。
家まであと5メートル、換気扇の煙突からはカレーの匂いがして
何故か、何故だか喉の奥がキュッと狭くなった。
玄関を開けて靴を脱ぐと、締め付けられていた足がすっと楽になる。
「おかえり、今日はカレーだよ。」
クーラーの効いた台所はとても涼しくて気持ちよくて、そしてあたたかかった。
何故か、何故だか
喉の奥がキュッと狭くなった。
追憶、幼少、無償の愛、
幻想
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