思い出舞う ( 1 / 4 )
―あの日のことが、昨日のことのように、僕の記憶を支配する―
本当に美しい桜が舞う中で、キミは振り返った。
キミの笑顔は、桜よりも美しかった。
「この桜…ずっと近くで見たいって思ってたんだ」
キミは悲しげに笑った。
あの時、どうしてそんなに悲しそうなのって問いかければ、キミは苦しまなかったのだろうか。
幸せになれたのだろうか。
今はそう思うのに、あの時の僕にそんな勇気はなかった。
「良かったじゃん、桜見れて。僕も嬉しいよ」
キミの顔を見ないようにして、僕は桜の木に触れた。
「ありがとう、みーくん。あたしも嬉しい」
まるで何もなかったかのように、キミの顔にはすぐに笑顔が戻った。
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