キス×フレ 14.もううそはつけない(1/21)


 息を切らして、それでも走り続けた。

 終電なんてもうないのに。

 街の灯りはほとんど消えているのに。

 それでも、わたしは千藤くんに会いたかった。

 今すぐに会って、謝りたかった。

 違うんだってちゃんと言いたいと思った。

 わたしが恋をしているのは、深海さんじゃなくて、他の誰でもなくて、千藤くんなのだから。

 ……でも。

「……遠い……」

 はあっと息を吐き出し、立ち止まる。

 ここから千藤くんの家までかなりの距離だ。

 とてもじゃないけど走ってなんていけない。

「……会いたい……っ」

 雨なのか、それとも涙なのか。

 頬を伝って流れ落ちるそれを服の袖でぐいっと拭う。

 会いたい。

 会いたい。

 会いたい。

 今すぐ、千藤くんに会いたいよ。


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