06.うそつきなキス(1/28)
ここ数日ハンバーグしか食べていない。
毎日仕事を終えたらうちで琴美のスパルタ指導のもと料理を習っていたのだ。
軽々しく琴美にコーチを頼んだのは間違いだったかもしれない。
あまりにも厳しい指導に「千藤くんに食べてもらえなくていいからもうやめたい」と半泣きで弱音を吐くことも多く、それでも琴美は「こっちはいろんな人とのデートを断ってまでここに来てるんだから日南子が千藤くんにあたしの納得できる手作りハンバーグを食べさせるまでは絶対に終わらせない」とうつろな目で恐ろしい表情をして言っていた。
月曜から練習開始して、今日で五日目。
いちばん最初に作ったものと比べればずいぶん上達したと思う。
そして今日作ったハンバーグがついに「これなら千藤くんに食べてもらえる!」と琴美のお墨付きをもらった。
ようやく肉だけの日々から解放される。
おかげでひき肉や玉ねぎを見るだけで無意識に体が震えるようになってしまったけど。
やっと納得のハンバーグを作れるようになったわたしに琴美は満足してくれ、すぐにお泊まりセットを持って金曜日の彼氏の元へ出掛けていった。
わたしに酒が欠かせないように、琴美の生活には男の人が必要なのだろう。
ま、ありていに言えばセックスがしたいだけだろうけど。
とにかく、ここまで付き合ってくれた琴美には感謝だ。
今日は思う存分ラブなホテルでハッスルしてほしい。