ウルトラマンファイアー
[序章―『儀式』](1/1)
M78星雲――本星となるウルトラの星を中心として数多の惑星が存在している。
そのひとつ、バースト星。バースト一族は胸にV字状のクリスタルがあるのが特徴で、体色は炎を思わせる赤であり、いにしえより炎を操り、呪文の扱いに長け、神秘的な一面を持つ種族である。そしてバースト星には星の宝、星宝『命の炎』が神殿の最奥に鎮座している。
そこに一人の年老いた男がいた。厳かな衣服を纏い、静かなる威厳をも纏っている様に感じられる。
バースト族、族長のザストである。
「ウム、次の者入りなさい」
付きの者に従われ、生まれたばかりの赤ん坊を抱いた母親が恐れ入りつつ、静かに神殿の最奥、星宝の間に入って来る。
「今日はこの方で最後にございます」
付きの者が静かに伝える。
「では、赤ん坊を」
母親はしずしずと赤ん坊を族長に預ける。
ここ、バースト星では一族の掟により、生まれた赤ん坊は全て星宝「命の炎」にかざし、生まれ持った力を観る儀式を執り行うのが慣習となっていた。
「では、かざしの儀式を取り行なう。星宝よ、この赤子の運命と力を示したまえ!」
水晶の様な宝珠の中で小さくゆらゆらと灯っていた炎は、その差し出された赤ん坊が前に来るや、激しく、轟々たる炎と変わる。今にも赤ん坊を燃やし尽くさんばかりに。
「なんと……」
炎の変化に驚く族長。
「これほどの激しい炎は長い間、かざしの儀式をして来たが……初めてじゃ……」
族長は母親に訪ねる。
「この赤子の名は?」
「まだ付けておりませぬ。族長様に良い名を頂きたく存じます」
「おお、そうか。ならば……」
族長はしばし考えた後、ウム、と小さく頷き言った。
「最も単純で尚且つ、強き名前……ファイアー……この赤子の名はファイアーじゃ」
母親は目を見開かんばかりに驚く。
「なんと恐れ多い。その名はバースト族の始祖様の御名ではありませぬか」
「良いのじゃ。強き名にて、その強い力を制御するのじゃ。必ず始祖様のご加護があろうぞ」
「おお、ありがとうございます。ありがとうございます」
族長が右手を上げると付きの者が母親を促した。
「ささ、族長様はお疲れになっておられます故」
頷く母親はゆっくりと星宝の間を後にした。
再び一人になると、族長は落ち着いた命の炎を見ながら祈った。
「あれほどの炎……ただの運命ではあるまい。ただならぬ事が起きねば良いが……バースト一族に平穏と安らぎを……」
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