君と描く未来【完】
[誕生日の願望ー杏子sideー](1/18)
「特別なことは本当にいらないんです。ただ、俺の部屋で借りてきた映画を一緒に観たり…杏子さんの手料理が食べたい。」
大翔の誕生日をやっぱりちゃんとお祝いしたいと言った私に、彼は少し照れくさそうにそう言った。
「DVDも借りたし、買い物して帰ろ。」
大翔に自分の気持ちを打ち明けた次の週の休日、駅まで私を迎えに来てくれた大翔とそのままDVDを借りに行き、近くのスーパーへと向かった。
「大翔は何が食べたいの?」
繋がれた手が嬉しい、なんて思いながらふと聞いてみると、
「……笑わない?」
少し戸惑った声を出したので、
「笑わないよ?」
どういう意味だろ…
と不思議そうにした私に
「…オムライス。」
と小さな声で。
「オムライス?」
「あー、どうせガキくせーって思ってるでしょ。」
私は何も言っていないのに、目を逸らして少し不貞腐れている大翔がとても可愛く思えて、
「ふふ。」
思わず笑ってしまった。
「ほら、笑ってるし。」
でもそれは、決して馬鹿にしてるとかそういうことじゃなくて、
「可愛い…」
思わず漏れた声。
- 241 -
前n[*]|[#]次n
⇒しおり挿入
[編集]
[←戻る]